2014年4月12日(土)
きょうの潮流
「朕惟(ちんおも)フニ、我(わ)カ皇祖皇宗(こうそこうそう)国ヲ肇(はじ)ムルコト宏遠(こうえん)ニ…」。校長の奉読が始まると、一同は頭を下げ、終わるまでせき一つできない。寒くて鼻水がたれても、すすったり、動いてもいけない▼戦前の学校で祝日や大祭日の儀式として読み上げられた教育勅語。当時の小学生の体験談です。最後に天皇の署名押印を表す「御名(ぎょめい)御璽(ぎょじ)」の言葉が終わると、いっせいに鼻水をすすり上げる音が講堂中に鳴り響いたといいます▼「現人神(あらひとがみ)」である天皇に命をかけて尽くすことを、国民にたたき込んだ教育勅語。御真影(ごしんえい)とともに、皇国精神を育てる根幹となりました。そこで示された徳目も、すべては天皇制の維持・発展に役立ってこそ、はじめて意味をもちました▼先日、半世紀ぶりに教育勅語の原本が見つかったというニュースが流れました。損傷や変色が激しく、明治天皇の御名御璽がある部分も開けない状態だそうですが、文科省が確認しました▼「教育勅語の中身は至極まっとうなことが書かれている」「軍国主義教育の推進の象徴のように使われたのが問題」。ニュースにかこつけた下村文科相の発言です。特定の愛国心や道徳を押し付けようとする安倍首相と同じ考えです▼戦後の国会で廃止されたにもかかわらず、教育勅語を擁護する人たち。しかし、上からの命令による死の強制は、国民主権の憲法や民主主義とは相いれない―。それが、悲惨な戦争を味わった国民多数の声でした。原点を覆そうとする人物に、教育に携わる資格はありません。