2014年4月9日(水)
外国人労働者受け入れ拡大 政府が方針
低賃金と人手不足の悪循環
4日、安倍政権が外国人労働者の活用拡大をめざす方針を決定しました。「人手不足」とされる建設業や農林水産業、製造業の短期就労をはじめ、高齢者介護、女性の「就労支援」にむけた家事サービスなどの分野にも受け入れの拡大を検討するとしています。外国人労働者の受け入れ拡大は、「人手不足」の解決どころか、さらなる悪化に拍車をかける恐れが強くあります。
この方針は、経済財政諮問会議・産業競争力会議の合同会議で、民間議員の提言を受けて決定されたものです。会議に提出された資料では、「育児・介護中で就業希望しているが就業できない女性等のため、家事の補助・介護分野での外国人のサポート」「国内でどうしても人材が不足する分野に技能職として一定の外国人を受け入れる方法を検討」などと打ち出しています。
しかし、これらの資料では、なぜ「人手不足」が生じているのか、女性の就労がすすまないのか、真剣な検討はありません。
建設業では、東日本大震災からの復興と、2020年の東京オリンピック開催にむけた建設工事が重なったことによる「人手不足」が指摘されます。しかし、人手不足の一番の原因は重労働にもかかわらず、一般労働者の7〜8割ともされる低い賃金水準を強いられ、将来展望をもてずに、建設業に従事する労働者が減少しているからです。
介護分野でも、貧困な介護保険制度のもとで、家族の介護をするために仕事をやめざるを得ない実態があります。介護労働者も深刻な低賃金、過重労働におかれ、労働者が定着せずに慢性的な人手不足に陥っています。
女性の「就労支援」でも、その最大の保障となる保育園の増設はすすまず、待機児童が増加。昨年から今年にかけて、保育園に子どもを預けられない若い親が各地で保育園の増設を求めて異議申し立てをしています。小学校入学後の放課後事業でも、深刻な矛盾が起きています。
また、「現代の奴隷労働」ともいわれる外国人の技能実習生を増やすことも提案しています。
これらの問題を放置したままで、日本人よりも低賃金を強いられる外国人労働者を増加させれば、どうなるでしょうか。賃金低下の圧力がさらに強まり、問題の深刻化に一層の拍車をかけることは必至です。
「持続可能な成長の確保」にとって必要なことは、各分野でおきている深刻な低賃金を解決し、男性も女性も働き続けられる労働条件や環境へと改善することです。 (行沢寛史)