2014年3月30日(日)
解釈改憲 歴代政府が否定
安倍首相「時代と情勢が変化」というが
「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としてきた政府の憲法解釈の変更に執念を燃やす安倍晋三首相は、「時代と情勢が変化した」などといって解釈変更を正当化しようとしています。
「情勢の変化」があっても、それだけで憲法解釈を変えられないことは、政府自身が閣議決定した政府答弁書(2004年6月18日)で述べていることです。同答弁書では、「諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても…政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではない」としています。「議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことに留意して論理的に確定される」(同)という憲法解釈の性質を重視するためです。政府は自衛隊の発足前から、60年近く、集団的自衛権の行使は許されないとしてきました。
ところが安倍首相は、前出の答弁書が「従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合、これを変更することがおよそ許されないものではない」としているのをとらえ、「全く(解釈の変更の)可能性がないのかといえば、そんなことはない」(4日の参院予算委員会)と強調。「諸情勢の変化」を前提に検討した結果、「至当(極めて当然で適切)」とされれば、解釈変更はできるというのです。
しかし、元内閣法制局長官の一人は「他の答弁書や答弁を合わせてみれば、集団的自衛権の行使を可能とする(方向への)解釈の変更が『至当』という結論が見つかるとは到底思えないというのが、今までの総合的な結論だった」と述べます。
また別の元法制局長官は「『至当』と言えるかどうかは主観も入るし、この問題でも変更が絶対にありえないといえるかは問題。しかし、60年近く続き定着した憲法解釈であることや、9条を無意味にする解釈は解釈の限界を超えるという問題がある」と指摘。「どうしてもという必要性・緊急性を示した上、積み上げられた論理をひっくり返すだけの説得的な説明が要る。しかし、そんな説明は全くなく、私には『至当』といえる余地はないと思う」と述べます。
「時代の変化」という抽象的な説明だけで、法的論理も欠いた解釈変更論は、破綻を免れません。(中祖寅一)
集団的自衛権行使を否定した主な政府答弁
1954.6.3 下田武三条約局長 衆院外務委
集団的自衛権は、自分の国が攻撃されていないのに、他の締約国が攻撃された場合に、自分の国が攻撃されたと同様にみなして、自衛の名において行動すること…憲法で認められた範囲は、日本自身に対する直接の攻撃、急迫した攻撃の危険のない以上は自衛権の名において発動しない
60.4.20 岸信介首相 衆院安保委
日本の憲法9条の規定から考えて、国連憲章51条の集団的自衛権が国際法上認められていても、海外へ出て締約国もしくは友好国の領土を守ることはできない…いわゆる集団的自衛権の典型的なものを観念上持っているが事実上行使できない
72.10.14 参院決算委提出資料
憲法のもとで武力行使を行なうことが許されるのは、我が国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られ、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されない
2003.7.25 小泉純一郎首相 参院外交防衛委
私は集団的自衛権を認めるなら憲法改正をした方がいいと思っている。憲法を改正しないで、集団的自衛権、これまで積み重ねてきた政府解釈を変えることは小泉内閣ではするつもりありません