2014年3月26日(水)
東電暴論
「年20ミリシーベルト以下問題ない」 「原状回復、金銭的に困難」
福島地裁 生業訴訟口頭弁論
国と東京電力に原状回復と、原状回復するまで慰謝料1人5万円の損害賠償を求めた「生業を返せ 地域を返せ!福島原発訴訟(中島孝原告団長)」の第5回口頭弁論が25日、福島市の福島地方裁判所(潮見直之裁判長)でおこなわれました。
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被告の東京電力はこの日、原告が求めている原状回復について「技術的にも金銭的にも実現が困難」とする準備書面と、「年間20ミリシーベルト以下の放射線を受けたとしても何らそれらの人々の法的権利を侵害したことにはならない」と主張した準備書面を提出。原告弁護団は「加害企業としての自覚がまったくない。無責任であり主張を撤回せよ」と、厳しく反論しました。
原告代理人の渡邉純弁護士は、「人が体に放射線を浴びれば、細胞中のDNAが破壊されること、低線量であっても長期にわたって被ばくをすれば、ミクロレベルでのダメージを受け続けることも科学的知見である」ことを述べて反論。原状回復が金銭的に実現できないと開き直るのは「被害者を愚弄(ぐろう)し、天につばするようなもの」と糾弾しました。
福島市内に住む渡部保子さん(72)が意見陳述。渡部さんは、医師の長男家族が家族バラバラになることを避けて福島市内にとどまることを選択したことを尊重して県外に避難しなかったことを述べました。「今でもあの時の判断が正しかったのか複雑な気持ちがする」と傷ついた心情を訴えました。「孫たちや次の世代が、きれいなふるさとで生まれ育ったという誇りを取り戻せるように、早く国と東京電力は、自らの過失を認め、二度と同じ事を起こさないように、解決に力を尽くしてください」と陳述しました。
中島団長が反論の陳述を急きょしました。
「(東電が)安全だと信じない被災者が悪い、非科学的であると断ずるのは、慢心の極み。金がかかりすぎて不可能だという言葉ほど被災者の心を侮辱するものはない」と批判しました。
開き直り撤回を
1月に行われた第4回口頭弁論で潮見裁判長は過失の有無について審理することを決めました。
今回東電は、過失が無いことを主張するにあたって、年間20ミリシーベルト以下の放射線量を受けることは我慢し、受忍せよと被害者に迫ったものです。さらに、放射能をまき散らしながら、お金が無いのできれいに元に戻すことはできないと開き直ったのです。
この日陳述した渡部さんは、「非常に頭にきました。こうした暴論を許すと廃炉のためにお金がどれだけかかるのか分からないからできないということにもなりかねません。撤回すべきです」と抗議していました。 (菅野尚夫)