2014年3月26日(水)
主張
安倍首相側近発言
打ち消しても疑念は消せぬ
安倍晋三首相の側近で知られる萩生田(はぎうだ)光一・自民党総裁特別補佐が、日本軍「慰安婦」問題での河野洋平官房長官談話の「検証」に関連して、「新しい事実が出てくれば新しい談話を発表すればいい」と発言して批判を受けています。「河野談話」は見直さないとの安倍首相の国会答弁と食い違っているためで、菅義偉官房長官は「個人的な発言」と打ち消していますが、首相が側近の口を借りて本音を語ったという疑念が消えません。もともと、「河野談話」を見直さないなら「検証」など必要ないのに、検証は進めるという首相の態度は矛盾だらけだからです。
「個人的発言」ですまない
萩生田氏は、自民党総裁の特別補佐として昨年8月15日の終戦記念日には安倍首相代理で靖国神社に参拝したこともある側近中の側近です。昨年12月の安倍首相自身の靖国神社参拝の後には、アメリカのオバマ政権が「失望」を表明したことに対し、「共和党政権の時代にこんな揚げ足を取ったことはない。民主党政権だから、オバマだからいっている」などと非難しました。安倍氏が任命した「自民党総裁特別補佐」の立場からも、単なる「個人的な発言」ですまされないことは明らかです。
菅官房長官は萩生田氏の発言に対し、「(新談話の発表は)ありえない。安倍内閣の思いは(河野談話は見直さないという)首相の国会答弁に尽きる」と発言しています。しかし、もともと日本維新の会の議員の質問に答え、「河野談話」の「検証」を言い出したのは安倍内閣であり菅官房長官です。
内外から批判が高まり、安倍首相は国会答弁で「河野談話」の見直しは否定しましたが、菅官房長官が進める「談話」の「検証」については否定しません。見直す気がないなら「検証」をやめさせればいいのに、それをしない首相の態度に、本音は「河野談話」を見直すのではないかとの疑念が消えないのは当然です。首相側近の萩生田氏の発言が、「個人的発言」ですまされないのは明白です。
日本軍「慰安婦」について1993年に発表された河野官房長官談話は、当時の政府や軍が加担して朝鮮半島などから女性を連行し、日本軍のために性行為を強制したことを認め謝罪したものです。日本維新の会の議員は、「河野談話」は元「慰安婦」証言の裏付けがないなどと主張して「検証」を求めましたが、日本共産党の志位和夫委員長が14日に発表した見解でも明らかにしたように、「慰安婦」が軍の「性奴隷」とされていたことは多くの証拠や証言、判決から明らかです。あれこれの口実をあげつらって「河野談話」を否定しようとするのは、重大な戦争犯罪を免罪するための歴史の偽造以外のなにものでもありません。
発言放置する首相の責任
見過ごせないのは安倍政権では萩生田氏にとどまらず首相側近が歴史問題などで重大発言を重ね、首相がそれを放置していることです。衛藤晟一首相補佐官は首相の靖国参拝に失望を表明したアメリカに「われわれのほうが失望した」と発言しました。「慰安婦」問題を弁護した籾井(もみい)勝人NHK会長や南京大虐殺を否定した百田尚樹NHK経営委員も首相に近い立場です。度重なる側近の発言を放置する安倍首相自身の政治的資質とその責任が問われるのは当然です。