2014年3月25日(火)
きょうの潮流
まもなく新学期が始まります。さまざまな思いを胸にしての出発に、その学校生活が充実したものになるよう願わずにいられません▼『週刊少年サンデー』の人気漫画「銀の匙(さじ)」。映画も上映中です。主人公の八軒勇吾(はちけんゆうご)は憂鬱(ゆううつ)な新学期を迎えました。受験競争から逃げて、地方の農業高校に入学したのです▼ほかの生徒は農業を学ぶ理由や将来の希望がはっきりしています。八軒にはそれがありません。寮生活、早朝からの実習、初めて接する牛・馬・豚などの動物たち―。戸惑うことばかりです▼それでもいつの間にか、高校生活に必死になっていました。学校でできた食材でピザを作りみんなで食べたり、実習で育てた豚を自分で買い取ってベーコンにしたり。その中で八軒は受験勉強では得られないことを学びます。仲間と助け合うこと、失敗してもやり直せること、そして恋▼しかし今、日本の農業には厳しい現実が待ち構えています。八軒もつらい出来事にぶち当たります。親友の家が借金を返せず離農することになったのです。親友は牧場を継ぐ夢をあきらめ、働いて稼ぐために退学します。「うちも借金あるから人ごとじゃねえ」と語る仲間たち。「離農なんてめずらしくもない」と強がる親友に、八軒は「簡単にそんな言葉吐くな」▼農民を切り捨ててきた日本の政治。農業高校で頑張る若者たちが希望を持ち続けられるように手厚い支援をこそしてほしい。国内農業を壊滅に導くTPP(環太平洋連携協定)などもってのほかです。