2014年3月24日(月)
年金改悪 底なし
厚労省 支給開始先延ばしなど試算へ
「社会保障のため」消費税増税の論拠ぼろぼろ
厚生労働省は5年に1度行う公的年金の「財政検証」に今月から着手しました。支給開始年齢の引き上げなど制度改悪の試算を5月にも示し、国民に“究極の選択”を迫る構えです。4月からの消費税増税を前に「社会保障のため」という論拠はぼろぼろです。(深山直人)
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試算でまず示すのが保険料の納付期間の延長です。
■納付期間延長
現在は保険料を20歳から40年納めると、65歳から基礎年金で満額月6万5千円受け取れます。厚生年金は65歳支給へ引き上げている最中です。これにあわせて納付期間も65歳まで5年間延長しようというのです。
納付期間の延長で「受け取る年金が増える」(田村憲久厚労相)といいますが、保険料負担増が5年で約90万円に対し、増える年金額は50万円足らず。支給開始年齢引き上げによる苦しい生活に追い打ちをかけ、景気を冷やすだけです。
支給開始年齢をさらに67〜68歳に引き上げ、保険料納付期間も同じく延長する案についても示す考えです。
民主党政権の2011年、68〜70歳への引き上げ案が撤回に追い込まれたことに反省もなく、年齢を下げて実施をねらう姿勢です。
■適用者を拡大
支え手を増やすもう一つが、厚生年金加入者の拡大で、(1)パートなど短時間労働者で週20時間以上働く人はすべて加入させる(2)一定の賃金収入がある人をすべて加入させる―ことを検討します。
すでに週20時間以上働く月収8・8万円以上の人で、従業員501人以上の大企業に勤める25万人が、16年10月から厚生年金の適用になります。週20〜30時間働く人は380万人おり、さらに拡大をねらいます。
中小企業の労働者で給与所得控除の最低保障額に相当する月5万〜6万円の収入がある300万人を加入させた場合も検討します。非正規労働者が加入できるようにすることは当然ですが、低賃金や高い保険料などの改善もなく、重い負担と低年金を強いられることになってしまいます。
■「マクロ」発動
さらに、少子化と高齢化に応じて自動的に年金水準を削減する「マクロ経済スライド」を強化します。
「マクロ経済スライド」は、現役世代の減少などを理由に年金財政が毎年0・9%悪化すると見込み、物価は1%増でも年金は0・1%の伸びに抑える仕組みです。保険料は17年まで連続引き上げ、給付水準は現役の手取り収入の約62%(2009年)から50%以下に減らす計画です。
ただし、物価下落時には発動せず、物価の伸びが0・9%以下の場合も据え置くことになっています。厚労省はこの方針を見直し、物価・賃金の伸びが低い場合でも発動して削減をねらっています。
自公両党は「100年安心」といって年金改悪を強行(2004年)。安倍首相も「100年間で収支が均衡するように設計されている」(13年5月)と言明していますが、「年金改革」の破たんは隠しようがありません。
日本共産党は、(1)削減を中止して低年金を底上げする(2)最低保障年金を確立する―改革案を提起。財源も消費税に頼らず、ムダ遣いの一掃と応能負担の税制改革で確保する道筋を示しています。