2014年3月23日(日)
脱法ハウス 国の通知に波紋
シェアハウス・グループホーム “健全なものもつぶす”
貧困ビジネスともいえる「脱法ハウス」問題対策として政府が出した「通知」が、近年、広がりをみせている空き家を活用したシェアハウスやグループホームの実現を困難にする事態を招き、関係者の間で議論になっています。
寄宿舎と規定
国土交通省は、脱法ハウスの存在が明らかになるなかで昨年、「事業者が運営するシェアハウスは寄宿舎とする」という「通知」を出しました。これに、危険な脱法ハウス排除のための手段の度を越し、健全なものもつぶしてしまうのではないか、という懸念の声が上がっています。
国交省が火災時の安全を考え、シェアハウスを「寄宿舎」とみなすことにも一理あります。
しかし、「寄宿舎」と規定すると、主要な間仕切りの壁を燃えにくくするなどの規制がかかります。そのうえ、東京都では窓先空地(居室窓に面して避難や住環境のために幅1・5〜2メートルの空き地を求めるもの)を確保しなければなりません。
多くの空き家はこうした規制をクリアすることができないため、結果として、広がりをみせている単身高齢者や若者を対象としたシェアハウスやグループホームの事業化が困難になっているのです。
日本住宅会議・関東支部は、このほど、東京都内で「脱法ハウスからあるべきシェア居住の育成へ」をテーマに集会を開きました。
「シェアハウスにふさわしい用途を新しく導入することを提案する」とのべたのは小林秀樹・千葉大学教授。「のべ床面積200平方メートル以下(の空き家)を転用してシェアハウスにする場合、一戸建ての場合は2階建て以下、居住人数が5〜7人以下のものを『特定住宅』とみなす」というものでした。
自治体基準を
その場合、具体的な基準は各地方自治体の事情に即して決めるのがよいとしています。
同教授によると、愛知県では、グループホームという福祉用途に限って建築基準法上の「住宅」としたうえ、独自の基準を定めています。
このほか、「ひつじ不動産」代表取締役の北川大祐氏が、「安全性、居住性、透明性、借家人保護といった面で、一定以上の水準が市場全体に波及することを目指した」取り組みを報告しました。(党国民運動委員会・高瀬康正)
脱法ハウス 本来、住居に利用される目的でない倉庫や貸しオフィスなどを細かく仕切り、建築基準法や消防法などに違反する狭い空間を「シェアハウス」として非正規で働く若者などに貸し出すもの。