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2014年3月20日(木)

主張

教科書検定改悪

侵略美化の押し付けやめよ

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 安倍晋三政権が教科書検定の大改悪をすすめています。文部科学相の諮問機関、教科用図書検定調査審議会は今月下旬にも、教科書検定で合否を判断する指針である審査要項を改定する予定です。この改定により、日本の侵略戦争の事実や平和の大切さを書いた教科書が、改悪教育基本法の「国を愛する態度を養う」に照らして「重大な欠陥」があるとして、検定で不合格になりかねません。

「愛国心」で合否判定

 教科書検定については、「家永教科書裁判」などのたたかいと国民の世論と運動で、政治的・恣(し)意(い)的な検定をある程度やめさせ、事実に基づいて記述を修正する方向へと、一定の改善をさせてきました。ところが今回の審査要項の改悪では、「愛国心」に沿った教科書かどうかという、一方的で恣意的な判断で合否を決めることが可能になります。この間の検定のあり方を大きく変えてしまうものです。

 教科書会社の関係者からは「何が『重大な欠陥』になるかわからず、『国を愛する態度』に反するといわれないように“安全”な記述をせざるをえなくなる」との声が出ています。「不合格にする」という脅しで教科書会社や執筆者を萎縮させ、日本のアジア侵略の記述を抑制させることは明らかです。

 自国を愛し、よりよい国にしようとすること自体は大切です。同時にどのような「愛国心」を持つか、あるいは持たないかは一人ひとりの自由です。国が「これが愛国心だ」と定めて押し付ければ、憲法19条が保障する「思想・良心の自由」を侵すことになります。「愛国心」を基準にして教科書の合否を決定することは、許されるものではありません。

 しかも安倍首相らのいう「愛国心」は極めて偏ったものです。安倍首相は就任前、侵略戦争を「自存自衛のための戦争」「アジア解放の戦争」とする歴史教科書を、「愛国心」を目標に加えた改悪教育基本法にふさわしいものとして賛美してきました。自民党は侵略の事実を書いた多くの教科書を「自虐史観」だと攻撃しています。彼らのいう「愛国心」が、侵略戦争を美化し、子どもたちを戦前のように国家への忠誠に向かわせるものであることは明らかです。

 教育基本法改定を提起した中央教育審議会の答申でさえ、「(愛国心が)国家至上主義的考えや全体主義的なものになってはならない」とのべていました。「愛国心」の名で侵略戦争美化を教科書に押し付けることは許されません。

 すでに文科省は検定基準そのものも改悪しています。来年度の中学教科書検定から適用される新基準は、政府見解に基づいた記述を強要し、南京大虐殺の犠牲者数や日本軍「慰安婦」問題など侵略・加害の事実を書かせないことを意図したものです。

国際社会で通用しない

 日本の起こした戦争を侵略戦争として断罪することは戦後の国際秩序の土台でした。学校教育で日本の侵略と加害の事実を伝えることは、子どもたちに民主主義の道を歩む誇りと国際社会で通用する常識をはぐくむうえで欠かせません。歴史の真実を学ぶことは子どもたちの権利でもあります。国際常識にも反する侵略美化と偏った「愛国心」を押し付ける教科書検定をやめさせるため、世論を広げることが重要です。


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