「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2014年3月16日(日)

真相深層

低賃金で「11日連続勤務」

バス事故生む過酷労働

人手不足 業界の悪循環

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 運転手は事故当日まで11日間、連続勤務だった―。富山県の北陸自動車道で起きた高速夜行バス事故。亡くなった宮城交通(仙台市)の運転手小幡和也さん(37)は、過酷な勤務が続いていたとみられます。問題点を見ると…。

 (遠藤寿人)


写真

(写真)大型トラックに衝突し、現場から運ぶため持ち上げられた高速夜行バス=3日、富山県小矢部市の北陸自動車道小矢部川サービスエリア

 給料が安く働く時間も長いため、バス運転手のなり手がいない―。バス業界全体に広がる「運転手不足」の悪循環です。業界団体の調査で、都市部の会社の6割近くが「運転手が足りない」と回答しています。

 国土交通省は昨年12月、この問題の改善を目指す「検討会」を設置。宮城交通の青沼正喜社長もこの「検討会」のメンバーです。

高い休日出勤率

 同社が「検討会」に提出した同社の資料によると運転手不足の影響として、「休日出勤率の高止まり」と題した表があります。昨年4月〜11月、平日に休暇を取る予定だった運転手の「60%」が、休みを返上して業務に従事。同じく土日祝日でも「33%」の運転手が休日出勤していることが示されています。さらに、同社は休日出勤だけで人手不足を補えず、高速バスの8路線を一時運休にするなどしています。

 同社の運転手は「休日出勤しても人手が足りない。土日を休むと給料が安くなる。休日に1日出ると1万円のプラスになる。月4万円違ってくる」と話します。

 小幡運転手は2月21日から事故当日の3月3日まで連続11日間勤務でした。法律上、週1回休むのが原則ですが、労使協定で休みを2週間に1日としているため、最長13日間連続勤務が可能となっているのです。

 同運転手は、事故を起こしたバスに乗る前日(1日)、午後1時から約10時間、仙台市内の「路線バス」を運転していました。

 同社の別の運転手は「路線バスと高速バスの掛け持ちは当たり前だ。連続して高速を乗ったら、次の日は路線の遅い番になる」と話します。

 厚生労働省の自動車運転者の労働時間等の改善基準(改善基準告示)では「休息期間は1日継続8時間以上」と規定されています。

 小幡運転手は「路線バス」の乗務終了から「高速バス」の勤務まで、十分な休息が取れたのか…。青沼社長は記者会見で、過労の可能性について「(事故を起こした)夜行便まで十分休憩はあったと思う」と述べています。

 しかし、関東で高速バスに乗る50代の運転手は「改善基準告示通り休息があってもその実態や中身が問題だ」と力を込めます。

 「例えば、出発前に20分点検がある。タイヤをたたき、ベルトの緩みや灯火設備の点検。毛布を用意しカーテンを締め、ヘッドホンやパンフレットを配る。これは20分では終わらない。結局、休息時間を削って、早出して間に合わせている」

 全国自動車交通労働組合総連合会(自交総連)の菊池和彦書記次長は「改善基準告示の上限が甘すぎる。基準を守っていても過労になる。8時間の休息時間も短すぎる。通勤、食事、入浴時間を含めれば、睡眠はわずかで疲労回復ははかれない」と批判します。

重大事故3倍増

 日本共産党の辰巳孝太郎参院議員は13日の国土交通委員会で、運転手の病気を原因とするバスの重大事故が2012年に58件発生。10年間で3倍以上に増えていると追及。太田昭宏国交相は「過重労働や病気が引き金になって事故が起きた」として対策を講じていくと述べました。

規制緩和で年収急減 価格競争が激化

 2000年からの規制緩和や分社化の影響でバス事業の新規参入が急増。価格競争が激化し人件費の抑制が進みました。98年度、民営乗り合いバス運転手の平均年収は621万円(表)。全産業男子570万円より上でした。ところが01年度に逆転。12年度には446万円で全産業男子の530万円を大きく下回っています。規制緩和は12年の関越自動車道事故後も見直されていません。一方、バス運転手の年間労働時間は全産業より400時間も長い。

図

見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって