2014年3月16日(日)
きょうの潮流
「コピペ」。パソコンの画面上でのデータの切り貼り(コピー・アンド・ペースト)の略称です。マウスで範囲を指定した後、クリック一つで大量の文書を移動できる、便利な機能です▼「生物界の常識を覆す発見」と注目された「STAP(スタップ)細胞」の論文に、海外の論文から一部を「コピペ」(盗用)していたことなどが発覚。一昨日、筆者の小(お)保(ぼ)方(かた)晴子さんらが所属する理化学研究所の調査委員会は、論文の撤回を勧告しました▼調査委員会によれば、小保方さんは盗用の有無について、「引用元は覚えていない」と答えたといいます。ただ、海外の研究機関がインターネット上で公開している論文に酷似した記述があります。論文の執筆過程で「クリック一つ」の手軽さに誘惑されてしまったのか▼確実に言えるのは、論文筆者らの研究者としての倫理観や、他の研究者の努力に対する敬意の欠如です。同時に、今回の問題はインターネット時代における知の扱い方を考えさせられました▼実は、報道の世界でも、「コピペ」事件が多発しています。目立つのは、他社がホームページに速報で出した記事をコピーし、自分の記事に無断盗用するパターンです▼他者の知識に学ぶことなしに新たな知識は生まれません。ただ、そこには真(しん)摯(し)な姿勢が求められます。筆者が学生時代、文章力向上のために新聞のコラムを切り抜きしていましたが、当時の指導教官から「切り抜きだけではだめだ。ノートに書き写せ」と言われたことを思い出しました。