2014年3月15日(土)
伊レンツィ政権
低・中所得層向け 大幅な所得減税
1人当たり14万円案 労働界歓迎
【パリ=浅田信幸】イタリア中道左派政権のレンツィ首相は12日、低所得者に対する大幅な所得減税などを盛り込んだ包括的な減税措置を発表しました。国民の購買力を高めて内需を喚起する狙い。欧州でも主流の企業減税優先で経済活性化をめざす新自由主義路線や緊縮財政路線とは逆の方針で、労働界からも歓迎する声があがっています。
この日、政府が閣議決定したのは、年収2万5000ユーロ(290万円弱)以下の低・中所得者を対象に年間100億ユーロ(約1兆4000億円)規模の所得減税を行うというもの。対象となる被雇用労働者は約1000万人で、平均して1人あたりの手取り額は年1000ユーロ(約14万円)の増加となります。
レンツィ氏は閣議後の記者会見で「イタリア人のポケットに1000ユーロ多く入れたら、消費を助けることは明白。これは歴史的な意義を持つ財政改革だ」と強調。5月1日から実施する意図を明らかにしました。
財源は、中央政府の歳出削減や新規借り入れで、最近の国債金利低下による利払い負担の軽減により確保できるとしています。
また、今年の財政赤字目標を国内総生産(GDP)比2・6%から欧州連合(EU)が基準とする3%まで余裕を持って拡大する意向も示しました。
一方、企業税の一つであり医療費の財源とされている州事業税も10%軽減し、これについては金利所得税を現行の20%から26%に引き上げて相殺する方針です。
政府歳出削減の詳細はまだ発表されていませんが、伊紙スタンパは有力な説として最新鋭の米戦闘機F35の購入計画見直しが上がっていると伝えました。
減税方針について、最有力労組・労働総同盟(CGIL)カムッソ書記長は、実際に実行されるのか5月まで待つ必要があるとしつつ、「税金を労働者に返すのは積極的な、すばらしい方針転換だ」と評価しました。