2014年3月14日(金)
川内原発 審査を優先
規制委 地元「防災・避難計画に問題」
原子力規制委員会は13日、原発の再稼働の前提となる規制基準の適合性審査で、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機の審査を優先的に進め、審査結果を取りまとめる審査書案の作成の準備に入ることを決めました。審査“合格”の見通しを予告するのにも等しいものです。地元からは「福島第1原発事故が収束していない」「防災・避難計画も問題だらけ」など抗議の声が上がっています。
規制委は、原発へ影響を与える最大の地震の揺れ(基準地震動)や、敷地に影響を与える津波(基準津波)などが確定し、他に重大な審査上の問題がないと判断された原発で、審査書案の作成に入るとしていました。
審査を担当する島崎邦彦委員長代理と更田(ふけた)豊志委員が進捗(しんちょく)状況を説明。田中俊一委員長は「川内1、2号機について、まず申請の補正と審査書案の作成の準備に入る」と述べました。審査書案の作成後は、意見募集や公聴会を開くとしています。
九電は、申請時に540ガルとしていた基準地震動を620ガルへわずかに引き上げました。
川内原発は、過去に火砕流が到達した可能性が指摘されていますが、九電は運用期間中に破局的噴火の可能性は「十分低い」としています。また先月、市民団体などが原子炉から800メートル東で活断層の疑いがある断層を発見したとして、九電などに徹底した調査を求めています。
これまで10原発17基の審査申請が出ています。
解説
政府・電力会社の意に沿う
原子力規制委員会の今回の決定は、安倍自公政権が原発再稼働に躍起となる中で、規制委がそのお先棒を担ぐことを表明したものです。規制委は、審査優先を決めた原発には「審査チームの総力を挙げて」審査書案の作成に入るとしています。田中俊一委員長は先月の会見で、審査優先原発は審査合格の見通しが立った原発だと述べており、審査途上で、早々“合格のお墨付き”を与えたことになります。これらは、再稼働に前のめりの政府や電力会社の意向に沿ったものです。
政府は、規制委の規制基準について「世界で最も厳しい水準」と繰り返し、合格した原発は「安全」だとして、再稼働のテコにしようとしています。しかし、たとえ基準を通っても、原発の危険から住民の安全を守れないことは、東京電力福島第1原発事故で明らかです。だから国民の多数は再稼働に反対し、原発ゼロを求めているのです。
規制委が審査優先原発を決めても、再稼働の見通しが立ったわけではなく、審査の対象にしていない防災・避難計画の実効性など課題は山積しています。国民の安全を置き去りにした無謀な再稼働はやめるべきです。 (「原発」取材班)