2014年3月12日(水)
きょうの潮流
近所の図書館に寄ったら、アンネ・フランクの関連本が目につく場所に移されていました。川崎市内の図書館では特設コーナーをつくり、借りていく利用者も増えているといいます▼被害を避けるために本を避難させた所もありましたが、“災い転じて”とした図書館の姿勢に拍手を送りたい。これからも大勢の目に『アンネの日記』がふれていく。それが、歴史を覆い隠そうとする黒い闇を晴らすことになるのですから▼ナチス・ドイツの蛮行とともに、人間アンネ・フランクの感性が生き生きと描かれた日記。しかし人類が犯した最悪の罪を正面から問うたのは、ゲシュタポに捕まった彼女が死をむかえるまでの7カ月でした▼連合軍が迫るなか、最後の移送列車に家畜のようにつめこまれ、アウシュビッツへ。父との別れ、悲嘆と衰弱の末に死んだ母。そして、姉とともに別の収容所に移され、ガリガリに痩せこけてチフスにかかり、解放直前に亡くなりました▼アンネがくぐった絶望の門。それを作品に含んだチェコの彫刻家、ズビネック・セカールの展示会が23日まで渋谷のギャラリーTOMと神奈川県立近代美術館の鎌倉別館で開かれています▼先の大戦中、レジスタンス運動に身を投じ、強制収容所に入れられたセカール。プラハの春も体験した彼の造形の多くは異様さのなかに自由をもとめる空間があります。「繊細で想像力の豊かな人が門をくぐると、きっとその人に何らかの変化が起こる」。開かれた門が未来へと通じるように。