2014年2月25日(火)
きょうの潮流
遅まきながら、山田洋次監督の「小さいおうち」を見に行きました。平日にもかかわらず、客席はいっぱい。ご年配が多いなか、若い人の姿も混じっていました▼映画の舞台は東京郊外にたたずむ赤い屋根のモダンな家。先の大戦前、そこに女中奉公できた若いタキが晩年、その家であったことを回想する展開で物語は進みます。何十年もの時を経て解き明かされていく秘密。揺れ動く心の機微に、引き込まれていきます▼一つの家の暮らしに光をあてながら、そこに忍び寄る戦争の影を山田監督は描きます。何もかもが窮屈になっていく重苦しさ。人びとは不本意に生きることを強いられ、やがて取り返しのつかない悲劇に巻き込まれていった時代を▼「ぼくは戦争中の日本の市民生活を知っている最後の世代。だから、どうしてもこれを今の観客に見せたい。あの時代の日本人がどんなふうに暮らしていたか、そして、どんなふうにしてこの日本という国が戦争に進んでいったかを、今の人たちに伝えたかった」▼山田監督は昨年12月、秘密保護法案に反対する映画人の会の呼びかけ人を務めました。また集団的自衛権行使による「戦争する国」づくりに反対するアピールの賛同人にも名を連ねています。いずれも、多くの映画人、各界の著名人が賛同の声をあげています▼安倍政権が世界から孤立するなかで、国際的にも高く評価された「小さいおうち」。自由が束縛されていった時代に戻してはならない―。空気の色に敏感な文化人の真骨頂です。