2014年2月24日(月)
きょうの潮流
キティーへ。日記帳に付けた名前を呼びかけてから、少女は日常の生活をつづりました。家族や友達のこと、恋人ペーターのこと。そして隠れ家での暮らしを▼『アンネの日記』を初めて手に取ったのは中学生のころでしょうか。学校の図書館で何人にも借りられ、薄汚れた1冊。他人の秘密をのぞくような感覚と、なぜ彼女たちはこんな目にあわされるのかという理不尽さを感じた記憶があります▼ナチス・ドイツによるホロコーストの嵐が吹き荒れた第2次世界大戦中、ユダヤ人というそれだけの理由で、たえまない恐怖と孤独におびえ、最後は殺されたアンネ・フランク。その日記は人間が犯した最悪の罪と歴史を知る記録として、世界中で読み継がれています▼ユネスコの世界記憶遺産にも登録された人類の宝。それがいま、東京都内の公立図書館で次々と破られています。関連図書をふくめ、少なくとも250冊以上。杉並区では11の区立図書館で計119冊の破損が見つかりました▼引きちぎられた『アンネの日記』。先日は東京都美術館が展示中の靖国参拝を批判した作品の撤去を求めました。「従軍慰安婦」をめぐる作品の取り外しを要求していたことも。原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」を教育現場から遠ざけようとする動きも起きています▼そこからは、ゆがんだ歴史観や偏狭さ、憎しみさえうかがえます。歴史を逆行し、国民から自由や権利を奪う安倍政権の登場とともに広がる黒い影。負けるわけにはいきません。