2014年2月20日(木)
教育委員会「改革」
教育の政治支配狙う
「戦争する国」づくりへ
安倍晋三首相は、教育委員会「改革」を「教育再生」の重要課題として位置づけてきました。その中心は、政治権力が教育を支配する制度をつくることです。
今回の自民党案はそれを文字通り体現するものと言えます。
第一に、教育政策の基本も、教育条件も、教員人事の方針も、すべて首長側に決定権をうつしています。いずれも現在は教育委員会に権限があるものです。教育委員会には教科書採択などの権限が残されましたが、首長が「愛国心にいちばんいい教科書を選ぶ」と決めれば、採択が拘束されます。これでは教育委員会は首長の下請け機関で、首長がその気になれば政治介入が抑制なく可能になります。
第二に、教育の仕事を実際にすすめる教育長を、首長が直接任命罷免し、現在は心身の故障などに限定されている罷免条件も緩和します。現行法では教育長は、教育委員会が任命し指揮監督しますが、それが首長の部下となります。
第三に、文部科学大臣の権限を強化します。現行法では、「教育権の侵害」などでしか「是正指示」はできず、竹富町の教科書問題では指示がだせませんでした。それが出せるようになります。
安倍首相の姿勢には、教育関係者らの強い反発があり、当初の「教育委員会廃止」論は採用できませんでした。自民党案は反発を意識し、教育委員会が政治的中立性を確保するなどといいます。しかし、案の中身自体が、その役割をはたせなくするものです。今回の案は、安倍首相を十分満足させるものと言えるでしょう。
安倍自民党が教育の政治支配にこだわる理由は、彼らの国づくりです。憲法9条をかえて「戦争する国」をつくる、そのための「愛国心」教育をすすめる。派遣労働を無期限にするなど貧困格差をひろげる、それにふさわしい格差的な教育体系をつくる。いずれも、従来の教育委員会から反発が予想されます。その反発を国と首長の権限で抑え込む。ここに首長と国の権限を大幅にふやす狙いがあります。
国民は「首長の政治的考え方で教育を左右することはやめてほしい」「教育委員会はいじめや体罰に責任をもって対応してほしい」と思っています。そうした大多数の国民の願いにそった制度の民主的改革こそ求められているのであり、憲法が保障する教育の自主性を破壊する自民党案の方向は、国民的な批判によって断念させる必要があります。
(藤森毅・日本共産党文教政策委員会責任者)