2014年2月20日(木)
靖国参拝批判の作品 撤去要求
東京都美術館 「政治的メッセージ」
作者 「表現の自由侵す」
「表現の自由を侵す。言論規制につながる」―。現代日本彫刻作家連盟の中垣克久代表(70)は悔しさをにじませました。東京都美術館(台東区上野公園)で開催中の現代日本彫刻作家展で、同氏の作品の一部が「直接的な政治的メッセージにあたる」として、同美術館側から作品の撤去を求められたからです。中垣氏の作品だけではなく、同美術館は一昨年より2度にわたって「従軍慰安婦」をめぐる作品の取り外しを求めてきたことも明らかにしました。
|
中垣氏の作品は「時代の肖像―絶滅危惧種 idiot JAPONICA円墳―」。高さ1・5メートルのドーム状で頂上に日の丸、床には星条旗が敷かれています。秘密保護法を批判した切り抜きや、「日本は今病の中にある」などの紙が貼り付けられています。
問題が起きたのは展示2日目、16日の日曜日。小室明子副館長が作品の撤去を求めに来ました。「文言が『館』にふさわしくない」という理由でした。
文言とは作品の一部として貼られていたB4ほどの紙に手書きで縦に「憲法九条を守り、靖国神社参拝の愚を認め、現政権の右傾化を阻止して、もっと知的な思慮深い政治を求めよう…」と赤字で書かれていたもの。
中垣氏によると「撤去しない」というと「撤去しないなら字を消してくれ」「消しません」と1時間ほど押し問答が続きました。最後に「『憲法九条』『靖国神社』の2カ所を部分的に消してくれ」といわれ、中垣氏は「不本意ながら紙を取ってその場を収めた」といいます。
同美術館側の主張の根拠は都の運営要綱にあります。「特定の政党・宗教を支持、または反対する場合は使用させないことができる」と定めています。同美術館は「文書の全体が具体的な政治的主張だ。いろんなお客さんが見ると、『アジビラ』と思う人もいる。直接的な政治的メッセージと見られる」と話します。
なぜこの点に固執するのか…。同美術館によると発端は一昨年前。「従軍慰安婦」をテーマにした作品で「政府は補償すべきだ」などの表現に、お客から「不愉快だ。公立の美術館で一方的な展示はやめるべきだ」とクレームがつきました。以来、同館は賛否の分かれるテーマで、直接的な主張が盛り込まれた作品については「確認」するようになったといいます。昨年も「従軍慰安婦」をテーマにした作品の取り外しを提起しています。
同美術館を運営する東京都歴史文化財団は「都民の税金で運営しており政治的主張をする場ではない」。都生活文化局は「美術館は美術を鑑賞する場であり、政治的アピールをする場ではない」と本紙の取材に答えました。