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2014年2月19日(水)

主張

竹富町教科書問題

異常な政治介入は許されない

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 沖縄県八重山(やえやま)地区の竹富(たけとみ)町が、地区内の他の市町が使っている育鵬(いくほう)社版とは別の中学公民教科書を採択し、使用していることについて、下村博文文部科学相が同町教育委員会に対し、地方自治法にもとづく「是正要求」を行うことを公言し、育鵬社版の採択を強要しようとしています。地方の意向を無視した異常な政治介入です。

育鵬社版押し付け

 育鵬社の公民教科書は戦前の大日本帝国憲法を美化し、現憲法の改定に子どもたちを誘導する危険な内容です。自民党は2011年の中学教科書採択の際、侵略戦争を美化する育鵬社の歴史教科書とあわせて同社の公民教科書の採択を全国各地で推進しました。安倍晋三首相も当時、採択運動の先頭に立っていました。教育行政をめぐって「是正要求」が出されたことも、県を通さず直接市町村に出されたことも例はありません。どんな手段をとっても育鵬社版を使わせようという安倍政権の強権的な暴走そのものです。

 下村文科相は、「是正要求」の理由として「同一の採択地区内の市町村は同一の教科書を採択するという法律に竹富町は違反している」といいます。しかし、竹富町に違法性はありません。

 もともと、問題の発端になった11年の教科書採択では、八重山地区では誰もが育鵬社版とは違う教科書が採択されると思っていました。同地区の教科書調査員は1人も育鵬社版を推さず、PTA連合会も校長会も育鵬社版に反対していたからです。ところが採択地区協議会の玉津博克会長(石垣市教育長)が、規約まで変えて協議会内で育鵬社支持が多くなるようにし、育鵬社版を推薦する答申を出してしまったのです。

 この事態に住民は強く反発し、竹富町は別の教科書を採択しました。その後、沖縄県教育委員会が仲裁に入り、地区内の3市町の教育委員全員が参加した協議が開かれ、別の教科書を採択しました。地元紙は「採択逆転 市民安堵(あんど)」と大見出しで報じました。これは法律の定めた「協議」にあたり、それにもとづく竹富町の採択は違法ではありません。

 他の2市町は育鵬社版を採択しました。一本化にいたらなかった原因は、住民自治も教育の自主性も踏みにじった玉津氏らの側にあります。にもかかわらず、竹富町のほうを国の権力で屈服させようというのは、住民自治と教育の自主性への厚顔な挑戦以外の何ものでもありません。

 沖縄県教委は事態を打開するために、採択地区を分割し、竹富町と他の市町がそれぞれの教科書を採択できるようにすることを提案しました。文科相はそれさえはねつけました。竹富町は規模が小さく、単独では教科書研究ができないというのです。こんな人を見下した話はありません。竹富町の教育委員は熱心で、全員がすべての社会科教科書に目を通しました。研究能力をいうなら、教科書に目も通さなかった他市町の育鵬社版支持の教育委員こそ問題です。

現場の選択尊重を

 教育では現場の自主性と住民自治が大切にされなければなりません。いい授業のためには、教科書は実際にそれを使って教える教師が中心になって選ぶべきです。安倍政権は直ちに介入をやめるべきです。


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