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2014年2月15日(土)

海自艦・釣り船 衝突から1カ月

「戦闘モード速力 なぜ」 現役自衛官

釣り仲間 “悔しい”

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 上陸用舟艇とヘリを搭載するなど強襲揚陸機能を備えた海上自衛隊の大型輸送艦「おおすみ」と釣り船「とびうお」が広島県沖で衝突し、釣り船の船長と釣り客の2人が死亡した事件から15日で1カ月。遺族や釣り仲間、自衛隊関係者たちそれぞれの話から浮かび上がるのは「なぜ、どうして」という疑問符でした。

高森さんは慎重

 13日午後、衝突現場海域での第6管区海上保安本部による現場検証がありました。現場から海上自衛隊呉基地にもどるおおすみの動向を耳にした、とびうお船長の高森昶さん(67)の釣り仲間、谷口正己さん(67)=江田島市=は「見たくない」と悔しさをにじませました。

 谷口さんは高森さんとは30年来の仲間でした。「高森さんはとびうおを操縦しながらよく口にしていた。『大型船の船体の長さ分は離れないと危ない』と。機械設計を仕事にしていた谷口さんらしく船の操縦も慎重で安心して乗っていられた」

 「つり天狗」。谷口さんと高森さんがつけているつり行の記録です。最近4年分の「つり天狗」には毎回のつり場所、船長、メンバー、釣果(魚種、数)が書き込まれています。131回のつり行のうち63回が「船長・高森」とありました。

 衝突した日は今年初のつりでした。「前日、高森さんから『明日は行くぞ』と声がかかった。私は仕事の都合で『残念だが行けんわ』と返事した、それが最後の言葉に…」

 「つり天狗」の1月15日の欄にはこう書き込まれています。「さようなら」。谷口さんの万感の思いが伝わります。

教訓生かせず

 防衛省・自衛隊は衝突当時のおおすみの様子などについて何も明らかにしていません。瀬戸内海で護衛艦の当直士官を経験した現役自衛官は本紙の取材に、慎重に言葉を選びながらこう語りました。「おおすみの見張り不十分だったかもしれない」

 おおすみに設置されている船舶自動識別装置(AIS)によればおおすみの衝突直前の速力は17・2ノット。

 現役自衛官は「これは第一戦速とよばれる護衛艦が戦闘モードにある状態の速力に近い。なぜあの海域でそれほどのスピードを出したのか」

 護衛艦の巡航速度は12ノット程度とされています。おおすみの最近の任務に注目します。「伊豆大島での災害支援、その直後のフィリピンでの災害支援という『軍事作戦』から昨年末に帰国したばかり。おおすみは岡山県の造船所で改修工事に入る。幹部も含めて早く任務解除で帰宅したかった。全艦が『休暇モード』になり、緊張感が薄れる」

 2008年2月19日の千葉県房総半島沖で海自のイージス艦「あたご」が漁船に衝突、船長親子2人が死亡した事件の教訓は生かされませんでした。大小の船舶が行き交う現場海域にもかかわらず、「あたご」艦長は仮眠し、ありえない自動操舵(そうだ)で見張り態勢も不十分でした。

 おおすみは04年2月、陸自のイラク派兵で装甲車両などを現地に輸送しています。今後、海外での米軍との共同作戦を想定し、大幅に改修する予定です。(山本眞直)


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