2014年2月14日(金)
百田・長谷川氏の言動問題
「一定の節度持ち行動」
NHK経営委 異例の見解
NHK経営委員会(委員長・浜田健一郎ANA総合研究所会長)は12日の会合で、百田尚樹(作家)、長谷川三千子(埼玉大名誉教授)両委員の言動が国会などで問題となっていることに関し、「一定の節度をもって行動する」とした見解をまとめました。
会合では百田、長谷川両氏から説明を受けました。浜田委員長によると、百田氏は先の東京都知事選の応援演説で対立候補を「人間のくず」と指摘したことについて、「人のことをくずと呼んだのは、褒められた発言ではなかった」などと釈明しました。
長谷川氏は朝日新聞社で拳銃自殺した右翼団体元幹部を称賛した追悼文が問題化。同氏は会合で「根本から物事を考え、是々非々の判断をしたい」と述べました。また報道によると、自身の見解について「ほとんどの場合、常識的な公式見解と一致しない。むしろ常識を疑って見る目が公正中立を旨とするNHK経営委員会のお役に立つ」と語ったといいます。
これらの釈明や議論を踏まえ、経営委員会の見解は「『経営委員会委員の服務に関する準則』にのっとり、委員一人一人が、公共放送の使命と社会的責任を深く自覚するとともに、一定の節度をもって行動していく」としています。浜田委員長は「容易ならざる事態。経営委員が自ら律する必要があると思った」と語りました。
解説
民主主義の根本否定 経営委員の資格なし
NHK経営委員会が「社会的責任を深く自覚」「一定の節度を持って行動していく」と申し合わせたことは、極めて異例です。
先の都知事選で田母神俊雄氏の応援に立った百田氏は、「南京大虐殺はなかった」「東京裁判は米軍が大虐殺をごまかすためだった」などと述べ批判を浴びました。その上、他の有力候補を「人間のくず」と罵倒しました。長谷川氏は、朝日新聞本社で社幹部を脅し、拳銃自殺をした右翼団体元会長の行為を「神にその身をささげた」とたたえました。
いずれも歴史を偽造し、戦後の国際秩序を否定し、テロ行為まで賛美する発言です。誰にも思想信条の自由はありますが、問題は、民主主義を根本から否定する人物が経営委員であることは許されないという点です。
そのことは放送法が経営委員の資格について「公共の福祉に関し公正な判断をすることができる」(放送法31条)、「放送が公正、不偏不党な立場に立って…健全な民主主義の発達に資する…使命を負う者であることを自覚する」(経営委員準則)と定めていることをみても明らかです。
経営委員の任免は首相の権限です。「容易ならざる事態」(浜田経営委員長)にあたって、安倍晋三首相の任命責任がいま厳しく問われています。
(荻野谷正博)