2014年2月10日(月)
灯油高騰で北国悲鳴
価格 業界任せに怒り
アベノミクスの影 盛岡に見る
灯油の値上がりが止まりません。価格はこの10年で倍以上に。厳冬の北国で悲鳴があがっています。
(芦川章子)
「もう限界。これ以上どこをきり詰めればいいのか…」
盛岡市。氷点下の日がつづきます。雪が舞い、軒下にはつららが…。
福祉灯油切実
田中陽子さん(仮名、59歳)は、障害をもつ娘と2人暮らし。自身は事故の後遺症で思うように動けません。
1カ月の生活費は、娘の障害年金に自身の生活保護費、冬だけ生活保護に加算される「冬季加算」約2万円を足した約14万7千円です。
電気・ガス代に計約2万円、灯油に計2万円が消えます。昨年は合計3万円で収まっていました。
家は、築45年の木造住宅。壁や窓にはビニール製の自作の“断熱材”を張り、寒さと隙間風をしのいでいます。
夜はマイナス10度を下回ることも。寒さで体が痛み、ほとんど動けない日もあります。「ストーブをたかずには生きていけない。灯油はコメより大切」
同県沿岸部では低所得者に灯油代を補助する「福祉灯油」がありますが、盛岡市は行っていません。
大型店舗には「寒さしのぎのため」買い物もせず時間をつぶしている「灯油難民」と呼ばれる高齢者をよく見かけるといいます。年々高騰する灯油代に「どこに訴えていいか分からない。みんな必死で我慢しているんです」
急激な円安で
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経済産業省資源エネルギー庁によると、灯油の全国平均価格は(3日時点、18リットルあたり)1879円(店頭)と、過去最高値がつづいています。(図参照)
灯油の異常ともいえる高騰の背景とは―。
「岩手県生活協同組合連合会」の吉田敏恵専務理事は、▽投機マネーの流入による原油価格の高止まり▽アベノミクスによる急激な円安▽石油業法の廃止などエネルギー関連の規制緩和――の影響とみています。
かつて石油業法には、石油供給計画の策定義務などがあり、政府は石油の生産・備蓄や安定供給に責任をもつことができました。
しかし政府は1990年代後半から規制緩和を進めました。2002年、小泉政権は石油業法を廃止。価格は完全に石油業界任せとなりました。
「原油価格の値上がりを超えて灯油は値上がりしている。石油元売り会社が灯油でもうけようとしているのは明らか」と吉田さんは批判します。
日本生活協同組合連合会は5日、「全国的な問題に」と「灯油問題学習懇談会」を東京で開きました。
経産省、消費者庁、石油連盟、学者らも出席。「市場経済」「行政不介入」を繰り返す行政と業界―。
同会に出席した吉田さんは怒りをこめていいます。「灯油は公共料金に準ずる必需品です。政府は自らの政策による害を消費者にかぶせるだけで、何ら対応しようとしていない。あまりにもひどい」