2014年2月8日(土)
主張
安倍首相改憲答弁
尊重・擁護は全く念頭なしか
歴代政権が憲法上否定してきた集団的自衛権の行使は憲法解釈の変更でおこなう、憲法を変えやすくする憲法96条の改定にも取り組む―安倍晋三首相が国会答弁で、憲法を否定する発言を繰り返しています。明文改憲であれ解釈改憲であれ、安倍首相が改憲に前のめりなのは明らかです。憲法99条は国務大臣や国会議員は「憲法を尊重し擁護する義務を負う」と定めています。安倍首相にはこのことがまったく念頭にないのか。首相が当たり前のように改憲答弁を繰り返すこと自体、憲法を踏みにじることになるのは明らかです。
「法治主義」の否定まで
自民党を含む歴代政権が「憲法上行使できない」としてきた集団的自衛権を、政府の憲法解釈を変えるだけで容認しようという策動は、憲法の平和原則を踏みにじるだけでなく、憲法や法律にもとづいて政治をおこなう「法治主義」まで否定してしまうものです。
集団的自衛権の行使は、日本が攻撃されなくても同盟国であるアメリカが攻撃されたような場合には、アメリカといっしょに海外での戦争に参加することです。憲法の平和主義に反して軍拡を続けてきた歴代政府も、自衛隊が出動するのは実際に日本が攻撃された場合だけだと条件を付け、海外に派兵した自衛隊の活動も他国の武力行使と一体になるものは認めないとしてきました。集団的自衛権の行使容認はそれを可能にします。安倍政権は日米軍事同盟を強化するため集団的自衛権の行使に執念を燃やし、4月には有識者の懇談会の報告書を得て対応を具体化すると、再三発言しています。
これまでの政府が、憲法上行使は認められないとしてきたものを安倍政権が勝手な解釈変更で実施するとなれば、憲法や法治主義はまったく空洞化することになります。安倍首相は憲法解釈を変更したあと必要な法整備も実行するといいますが、国会の3分の2で発議し国民投票で決めなければならない憲法の変更を、国会の過半数で決められる法律の改定で決める「立法改憲」も、空洞化の点では同じです。解釈改憲も立法改憲も許すわけにはいきません。
もちろん安倍首相が、憲法の条文そのものを変更する「明文改憲」もあきらめていないことは、首相が「日本維新の会」議員の質問に答えて「96条を改定すべきだと思っている」などと発言したことでも明らかです。96条改定は、憲法改定を国会が発議する条件を引き下げ、憲法を改定しやすくするものです。時の政権が改憲をねらえばそれが実現できるよう、まずハードルを下げるなどというのは、権力の横暴を縛る憲法の「立憲主義」に反するものです。
自民党は自衛隊を「国防軍」とし、個別的自衛権も集団的自衛権もその行使にはいっさい制約を設けない改憲案を準備しています。現在の憲法を根底から破壊する策動を許さないためにも、96条改定を認めるわけにはいきません。
あらゆる改憲策動許さず
国民の圧倒的多数は、集団的自衛権を行使する解釈改憲も、改憲をしやすくする96条改定も望んでいません。昨年、96条改定先行をねらった安倍首相は、広範な国民の反対で阻止されました。
改憲に前のめりな首相の策動を阻止するため、憲法を守り生かす国民の世論と運動が急務です。