2014年2月7日(金)
きょうの潮流
「日本を美しい国にする」。安倍晋三氏が初めて首相になった2006年、口にした言葉です。「美しい」というフレーズとは裏腹に、少なくない国民がきな臭さを感じたものでした▼はたして、安倍氏が取り組んだのは改憲手続き法に、「愛国心」押し付けの教育基本法改悪、防衛庁の「省」昇格などでした。ただ、任期後半は支持率が急落。07年の参院選での歴史的惨敗で退陣に追い込まれました▼一昨年の総選挙で政権に返り咲いた安倍氏。次に打ち出したのは「新しい国」です。新著『新しい国へ』(文芸春秋)は、時の総理の政権構想だけに、売り上げを伸ばしました。ところが、06年当時の著書『美しい国へ』に加筆しただけのもの。「書籍代をだましとられた」と頭にきたのを覚えています▼これらの政権構想は抽象的な印象をぬぐえませんでした。しかし今、安倍政権が描く「国」の正体がはっきり見えてきました。それは美しくも新しくもない「戦争する国」です▼昨年の秘密保護法強行に続き、今国会では明文改憲、解釈改憲、さらに改憲手続き緩和のための96条改定まで答弁しました。4月には、歴代政権の憲法9条解釈を根底から覆す報告書が提出されます▼昨年末の靖国神社参拝では、世界中から非難を受けました。一連の動きに「安倍氏の狙いは『戦後体制の脱却』である」「それは時代錯誤的であり、同時に危険なビジョンである」と米紙の声。「戦争する国」へ暴走すればするほど、孤立が深まるのも事実です。