2014年2月5日(水)
消費税増税をやめて家計応援する政策に転換を
衆院予算委 佐々木議員の質問
日本共産党の佐々木憲昭議員が3日の衆院予算委員会で行った基本的質疑(大要)は次の通りです。
佐々木 復興めぐり個人には8兆円増税、企業には20兆円減税、公平・公正ではない
首 相 (まともに答えられず)
佐々木 安倍内閣のやっていることは経団連の要望どおりのことではないか
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佐々木 政府は東日本大震災からの復興のため財源を確保するということで、企業には2012年度から復興特別法人税、個人には2013年1月から復興特別所得税を課しております。
復興特別法人税が導入されたときはまず、実質5%の法人税減税を恒久的に行ったうえで、3年間に限り同額の復興特別法人税を課すというものでありました。つまり、それ以前と比べて企業には実質的な負担増はないということであります。財務大臣、その通りですね。
麻生太郎財務相 復興特別法人税は東日本大震災からの復旧・復興のための財源につきまして、今を生きる世代全体で連携し、負担の分かち合いによる確保をするとの観点から創設されたもので、3年間の期限ということになったと思います。導入時における増収の見込み額は約8000億円。復興特別法人税の導入が企業経営に過大な負担にならないように配慮した、というのがそのときの背景だと記憶いたします。
佐々木 それを3年後に廃止するということであったものを2年後前倒しして、今年の4月から廃止するという提案がされています。この減税が行われると、法人税の基本税率は25・5%になります。
復興特別法人税は年8000億円ですね。したがって企業にとっては年間8000億円の減税ということになるわけです。その水準が恒久的に続くわけです。
一方、個人に対しては復興特別所得税が課せられ、昨年1月から所得税の納税額に2・1%を上乗せする形で増税が行われ、25年間続くわけです。今年6月からは個人住民税、ここに年間1000円の上乗せがあります。住民税の方は10年間の増税です。この個人の増税分は25年のトータルでいくらでしょうか。
財務相 25年間で約7・3兆円の増収額を見込んでおったということでございます。
佐々木 住民税と合わせると約8兆円になる。
企業は最初の2年間、復興特別法人税を課せられるわけです。それが2年だけでなくなって毎年8000億円の減税が恒久的に実行されます。増税がされる個人と同じ25年で並べてみますと、企業には約20兆円の大減税であります。
復興のためみんなで分かち合うという話でありますが、25年で企業には約20兆円の減税であります。その減税を受けるのは主として黒字の大企業で、7割を占める赤字企業は減税が届かない。
企業には20兆円の減税、個人には8兆円の増税。おかしいんじゃありませんか。総理は“税は公平・公正なものでなければならない”といいましたけれども、どこが公平・公正なんですか。
安倍晋三首相 法人税と個人にかかる所得税、住民税とはまったく別の種類の税金でして、何か法人対国民という対立構造が存在するかのような議論はおかしいと思うんですね。復興特別法人税は確かにいろんなご批判があったのは承知をしておりますが、復興予算は19兆円から25兆円に増やしました。私どもの政策によって上振れた成長の果実でもって、復興特別法人税の1年間前倒しという形にしたわけであります。
大企業に増税するな、消費税あげろ――経団連の勝手な提言
佐々木 総理は私の質問に全然答えない。税の種類は違うけれども、目的は「復興のため」ということで始まったわけでしょ。なんで国民だけ25年間延々と負担するんですか。企業はなんで2年でやめるんですかといっているんです。
だれにそんなことを言われたんですか(爆笑)。経団連じゃありませんか。
経団連が出した「平成24年度税制改正に関する提言」は復興税について「現行制度をもとに単純に付加税を課したり、…純増税を行うことは絶対に容認できない」と、企業には増税するなといっている。そして「まずは法人実効税率の5%の引き下げを早急に実現すべきである」と減税を求めている。そのうえで「復興財源として法人税についても何らかの負担増を行うのであれば、そのネット減税分を限度として付加税を時限的に課す…(いずれも3年以内)」。実に厚かましい。
それをそのまま受け入れたのは民主党政権なんですよ。それを自民党政権、安倍内閣が踏襲して前倒しして大企業への減税を早めている。これが実態じゃないですか。
首相 経団連にいわれてやっているわけではありません。これはおしなべて法人税という税制の中において、ということではないかと思います。
佐々木 いったいどちらを向いて政治をやっているのかということですね。安倍内閣に対して昨年、日本経団連が「平成26年度税制改正に関する提言」を出しました。「法人実効税率については、復興特別法人税の課税期間が終了する平成27年度以降の検討課題とされているが、遅きに失すると言わざるを得ない」。安倍内閣をけしかけて、大企業にもっと減税しろと圧力をかけている。
それだけにとどまらず、(首相は)1月のダボス会議で「法人税を今年の4月から2・4%引き下げます。…本年さらなる法人税改革に着手いたします」と。法人税ってそんなに高いんですか。
昨年12月2日に財務省が政府税調に提出した資料がありますが、法人税は基本税率30%なわけですね。実質負担率は何%でしたか。
財務相 平成23年度当時の法人税率30%に対して実質的な負担率は21・3%と算定されております。
佐々木 実際は3分の2しか負担していないんですよ。なぜかといいますと、連結納税制度、受取益金不算入制度、研究開発減税などの租税特別措置、欠損金の繰越控除制度などさまざまな減税措置がある。だから、課税対象がどんどん小さくなるわけですよ。
基本税率はいま30%ではなくて25・5%です。30%のときに21・3%ということですから、25・5%なら十数%になるんですよ。
大企業になればなるほど税負担率は軽くなり、巨大な企業グループである連結法人の場合はもっと負担が低い。まともに負担していないんですよ。それなのにさらに下げる。とんでもない話であります。
佐々木 法人税減税は賃金上昇につながらない――財務相も発言している
財務相 「資本主義経済」だから…
佐々木 企業アンケートでも内部留保に回るだけが実態ではないか
佐々木 では、法人税を下げたら賃金は上がるんですか。与党の「民間投資活性化等のための税制改正大綱」(昨年10月1日)にこう書いてある。
「賃金上昇につなげることを前提に、復興特別法人税の一年前倒しでの廃止について検討する」「その検討にあたっては、復興特別法人税の廃止を確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認すること等を踏まえたうえで、12月中に結論を得る」。
そこで確認したい。ここで書かれている「賃金上昇につなげられる方策と見通し」は具体的にどう確認したんですか。
財務相 政労使会議の場などにおきまして、政府から経済団体や業界団体、連合等々に賃上げや取引先企業の支援など広く働きかけ、こうした要請を踏まえて、経団連、連合からの表明がなされたことなどを総合的に判断いたしまして、復興特別法人税の1年前倒しを決定させていただいたのであります。
佐々木 ところが、昨年9月20日の記者会見で麻生大臣はこういっているんですよ。
「法人税を引き下げた場合に、その引き下げた分によって雇用の拡大、給与の引き上げ等々にきちんと回る保証を経営者がしますかね。それが確実にできるものでしょうか。ただただ内部留保がたまるということになるのでしたら、…およそ意味がない」「私から言わせると、企業が約束しますと言って本当にするでしょうか。まずしません」。麻生大臣、この発言は事実ですよね。この見解はいまでも同じですか。
財務相 ご存じのようにうちは資本主義、市場経済、自由主義でやっていますんで(爆笑)、共産主義経済をやってんじゃありませんから、政府が命令したからきちんといく、そんな簡単な話じゃありません。(政労使会議での合意が)実行される担保があるかといわれれば、いまからその手形を落としてもらうといろいろと話をさせていただかないかんということになろうかなと思います。
佐々木 日本では市場経済を前提というのはあたり前です。いま社会主義じゃないんだから。だからいっているわけですよ、こんな約束が本当に担保になるんですかと。
実際に、通信社のロイターが行った「企業調査」がありますけれど、復興特別法人税の1年前倒しなど、法人税減税が行われたなら、その分の利益(キャッシュフロー)を何に使いますかと問われて、一番多かった回答はなんだと思いますか。「内部留保」の積み増しで30%ですよ。「賃金」に回すと回答したのはわずか5%。これが実態ではありませんか。
財務相 昨年の9月まで総額約306兆円くらい企業で内部留保をしておると思いますんで、その総額がさらに積みますだけではないかというようなご指摘もよくいわれるところです。
佐々木 総理は本会議で、一部でボーナスが上がったと答弁しました。これは上がったところだけ取り上げて、それを平均したものなんですよ。ボーナスは、ゼロというところがどのくらいあるのかご存じですか。3分の1ですよ。それを除いて、上がったところだけ平均したってだめですよ。
内閣府の「最近の賞与の動向について」という資料があります。これには夏のボーナスの場合、「500人以上の大規模事業所では、前年比プラス2・6%と大きく増加したものの、それより規模の小さい事業所ではマイナスか低い伸びにとどまった」「経団連調査では年末賞与の伸びが高くなっているが、マクロ的にみた毎月勤労統計での年末賞与の伸びはそれよりも小幅なものにとどまる可能性がある」と指摘しておりますが、間違いないですね。
甘利明経済再生担当相 事実であります。
労働法制の改正、最低賃金底上げこそ必要
佐々木 一番大事なことは、ボーナス(一時金)よりもベースアップなんですよ。
NHKが行った100社を対象にしたアンケート調査でも、基本給を上げると答えた企業は9%。前回の調査より1社増えただけなんです。
これまで法人税の基本税率は43・3%がピークであります。それがどんどん下がり、25・5%。ところが賃金には回っていません。1997年をピークに賃金は下がり続けております。減税の多くは内部留保に回っています。すでに270兆円超えているんですね。
だいたい法人税を下げたら賃上げにつながるという考え方が間違っているんですよ。大企業が利益を上げたら、そのうち下請けや労働者におこぼれがあるだろうというのは、上から目線の「トリクルダウン」の発想であります。それはすでに破綻しているわけです。
政府がやるべきことは、二つあります。
一つは、低賃金で不安定な非正規雇用を増やしてきた労働法制を改正するということです。昨年は、雇用者全体に占める非正規労働者の割合は36・6%。過去最高で歯止めがかかっておりません。政府の2010年版の『労働経済白書』によりますと、「非正規雇用の増加は、…雇用者の平均賃金を引き下げる方向に作用してきた」と指摘しているわけですね。これを直して、労働者派遣法の抜本改正、そして若者を使い捨てにするブラック企業を規制する。
二つ目は、中小企業に対して直接支援を行いながら最低賃金を底上げする。時給1000円を目指すということであります。
どうも安倍内閣はこの二つの課題に消極的あるいは後ろ向きではないか。大企業にこれだけ内部留保がたまりにたまっているのですから、賃上げと雇用の安定、下請け企業の単価の引き上げ、こういうことは十分できると思うが、いかがですか。
首相 市場主義経済下において、企業に対して総理大臣といえども給料を上げるといって給料が上がるわけではありません。しかし、デフレから脱却するのはそう簡単なことではありませんから、それぞれができることをしようと。
私たちは復興特別法人税の1年前倒し(廃止)をしました。経営者に対しては、私たちはそこまでやったんだから、あなたたちも賃金に結びつけるように、下請け企業等々に対してちゃんと転嫁対策をやるようにお願いしたわけでありますから、そこで麻生大臣のように大変疑い深い人もいますから(爆笑)、これは政労使で文書で交わして、文書でちゃんと書き込んだわけですよ。
佐々木 消費税増税に国民の不安――業者が転嫁できない時は誰が負担するのか
首 相 納税義務は事業者
佐々木 身銭を切ることになるではないか――経営が続けられなくなる
物価が上がり、実質賃金は下がっている
佐々木 安倍内閣は「2年間で物価上昇目標を2%にする」ということでありますが、最近このサラリーマンの賃金が物価上昇に追いつかない、生活が苦しくなったという嘆きが聞こえてきます。
日銀に確認したいのですが、来年度の物価上昇の見通し、最近のデータで特に物価上昇率の高い品目を示していただきたいと思います。
木下信行日本銀行理事 電気代、ガソリン、テレビ、健康保険料、外国パック旅行、ルームエアコンなどとなっております。物価上昇見通しですが、2014年度は消費税引き上げの影響を除きまして1・3%、2015年度につきましては1・9%となっています。
佐々木 公共料金が上がり、物価全体を押し上げているわけです。
日銀の「生活意識に関するアンケート調査」では「物価上昇は困ったことだ」とお答えになっている方が8割。給与総額が18カ月連続して対前年比でマイナスになっております。そのうえ安倍内閣になって、実質賃金がずっと下がってきているんです。
実質賃金は昨年6月まで上がっていたんですが、物価が上がるもんですから実質賃金はそれにつれて低下して7月以降マイナスになっている。これは大変な事態なんです。
しかもそれだけではない。4月から消費税率を8%に上げるでしょ。ただでさえ、賃上げが追いつかないといっているところに消費税増税が上乗せされて、いっそう大変なことになる。税率が8%になりましたら、物価が約2%上がりますね。来年度は物価上昇と消費税増税を合わせると、何%の上昇と想定していますか。
経済再生担当相 来年度の物価上昇率は消費税込みで3・2%。消費税の分を外しますと1・2%です。
4%から5%の賃上げがないと所得は下がる
佐々木 3%を超えるわけですね。しかも、そのうえ社会保険料の負担も増える。ざっと見ますと、4〜5%程度の賃上げがないとサラリーマンの可処分所得は低下するんです。そのうえ、なかなか賃金が上がらない。実質賃金がずっと低下していくことになりますと、消費が停滞する。これが実態なんです。
しかも、中小企業も大変な事態でして、いま原材料が上がってそれが転嫁できないということで、日本商工会議所の調査によりますと、6割が転嫁できないといっている。このうえ消費税が上がったら大変だという声が聞こえるわけです。
政府が2011年に中小企業4団体に依頼して行った調査で、売上高3000万円以下の業者のうち消費税を「転嫁できない」と回答したのは何割ありますか。
茂木敏充経済産業相 現在の消費税5%分を「全部転嫁できている」が39・6%、「一部転嫁できている」が26・2%、「ほとんど転嫁できていない」と回答された事業者が34・3%。さらに今後、消費税率が引き上げられた場合の転嫁の見込みは、「全て転嫁できる見込み」と回答する方が27・5%、「一部転嫁できる」と回答された方が31・6%、「ほとんど転嫁できないと思う」と回答された方が40・9%おります。
佐々木 一部しか転嫁できない。転嫁できないというのも含めるとだいたい7割ぐらいあるわけなんですね。
転嫁できない場合、消費者から消費税を預かっていないわけなんです。しかし、業者は納税の義務があります。お金はいったいどこから出すのか。だれが負担するんでしょうか。
首相 消費税の納税義務者は事業者でありますが、消費税は価格への転嫁を通じて最終的に消費者に負担していただくことが予定されている税であります。転嫁拒否等に対する監視や取り締まりや事業者等に対する指導や周知徹底に努め、政府一丸となって万全の転嫁対策を講じていきたいと考えております。
佐々木 私の質問に全然答えていない。転嫁できない場合は、消費税を預かっていないですよ、消費者から。でも納税義務はあるんです。そのお金はどこから出るんですかと聞いているんですよ。
経産相 転嫁していただくために万全を期すわけであります。
減税した大企業から政治献金受け取るのか
佐々木 まったく質問に答えていない。消費者から税金を預かっていないんだから納税するのは自分のお金で納税しなきゃならんでしょうが。身銭を切るんですよ。だからいま業者の方々は大変だといっているんです。
たとえば、こういう声がある。「度重なる原材料の値上げで苦しんできました。年金生活をしている方が多いのでお客さんの財布のひもは固く、以前、コーヒー1杯300円から330円に値上げしたとき、売り上げが落ちて、以前の売り上げは戻っていないので、怖くて値上げできない」。これが実態なんですよ。身銭を切るから、いま倒産、こういう不安におびえているんですよ。
高齢者の場合はもっと大変です。いま高齢者は年金が減らされる。しかも、天引きばかりが増えている。2000年から2012年までの間に24万から22万に年金が下がりました。負担は2万から2万9000円に増えました。以前は収支とんとんだった。ところが12年には4万6000円の赤字になっている。
こういう状況のなかで、安倍内閣は大企業に減税をしてあげる。安倍さんにお聞きしますけれども、減税した大企業から政治献金を受け取りますか。
首相 政治資金については基本的に法にのっとって適正に処理をしております。
佐々木 庶民から取り上げて、大企業に減税を行い、その大企業から献金を受ける。政党助成金まで山分けする。「好循環、好循環」というけれども、「好循環」なのは金が回る財界と自民党の間だけで国民の方は悪循環ですよ。消費税増税をやめて、家計を応援する内容にかえる。こういう政策に転換することを求めて質問を終わります。