2014年2月4日(火)
主張
集団的自衛権
容認論のごまかし通用しない
衆参両院本会議での各党代表質問を皮切りに、国会で本格論戦が始まっています。重要テーマの一つは、歴代政府が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権行使の問題です。安倍晋三首相は今国会中にも政府の憲法解釈を変更し、行使を可能にしようとしています。
政府の定義では、集団的自衛権とは、自分の国は直接攻撃を受けていないのに、密接な関係にある外国への武力攻撃を実力で阻止する権利です。海外での武力行使、戦争に道を開きます。
本質ゆがめる議論
この間の論戦の特徴は、自民党、日本維新の会、みんなの党が、安倍政権による集団的自衛権行使容認への暴走に拍車をかけていることです。見過ごせないのは、集団的自衛権の本質をゆがめ、行使容認の必要を説いていることです。
自民党の石破茂幹事長は、「集団的自衛権の本質が、大国とともに侵略を行う権利ではなく、大国の横暴から自国を守る権利」だと述べました(1月28日、衆院本会議)。
しかし、集団的自衛権の歴史をみれば、侵略を受けた国を助けるという建前通りに発動された事例はありません。日本共産党の山下芳生書記局長が指摘(30日、参院本会議)したように、米国のベトナム侵略戦争、旧ソ連によるチェコスロバキアやアフガニスタンへの侵略など、大国による侵略と介入の戦争の口実になってきたのが、集団的自衛権の実態です。石破氏の主張とは正反対に、「侵略」や「大国の横暴」を正当化する役割を果たしてきたのです。
安倍首相は集団的自衛権行使の検討事例について、公海上にいる米軍のイージス艦の防護、米国に攻撃を仕掛けた国に武器弾薬を供給しようとしている船舶への対応を挙げました(29日、衆院本会議)。集団的自衛権行使の狙いが、超軍事大国である米国のために日本が海外でともに戦争に乗り出すことにあるのは明らかです。
「世界標準のルールでは、個別的自衛権とともに、集団的自衛権が認められるのは当たり前」だという議論もありました(みんなの党の渡辺喜美代表、29日、衆院本会議)。しかし、集団的自衛権は、自国が武力攻撃を受けた場合に行使する個別的自衛権とは異質の「権利」です。集団的自衛権が国連憲章51条に盛り込まれたのは、戦後世界の覇権を狙う米国が軍事同盟をつくり、国連の統制を受けないで自由に武力介入できるようにするためです。
集団的自衛権を認めるのが「世界標準」といいますが、実際に行使してきた国は米国、旧ソ連のほかには、イギリスのヨルダン介入やフランスのチャド介入など、ごく限られた軍事大国だけです。集団的自衛権の行使を可能にすることは、名実ともに日本がこれら軍事大国に仲間入りすることです。
反対世論が過半数
共同通信の世論調査によると、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に「反対」は53・8%に上り、「賛成」の37・1%を大きく上回っています(「東京」27日付)。集団的自衛権の行使容認派が本質をゆがめた議論を振りまくのは、国民の反対世論に危機感を抱いている裏返しでもあります。日本を「海外で戦争する国」にする集団的自衛権行使の狙いを広く知らせ、反対世論と運動をいっそう強めていく必要があります。