2014年1月30日(木)
主張
オバマ一般教書
国民への成果が試されている
オバマ米大統領が、施政方針を示す5回目の一般教書演説を行いました。米議会では下院議席の多数を野党・共和党が握り、オバマ政権が進める政策の前に大きく立ちはだかっています。大統領にとって今年の最大の課題は、11月に行われる中間選挙での失地回復です。教書演説は今年を「行動の年」と位置づけ、共和党の妨害を回避しながら政策実現をはかる構えを示しました。しかし、現実的な成果を優先させようとする姿勢は、「チェンジ」を掲げて大統領選で初当選した2008年に照らして、色彩を失っています。
最賃引き上げめざす
大統領は最低賃金の引き上げに焦点をあて、法定最賃は30年余前から「2割も減っている」と指摘しました。最賃引き上げ法案の可決を議会に求め、共和党が法案に反対するもとでも、行政権で連邦政府の契約企業職員の賃金を引き上げるとしました。国民に成果を示すことで、法案採択の環境づくりをしようとしています。
米国ではリーマン・ショック以来の不況のもとで貧困と格差の拡大が激化し、社会の分裂の深まりが注目されてきました。景気が上向いたとされる今日でも、経済状況についての国民の不満は強いままです。オバマ大統領は政権基盤でもある「中間層」の拡大強化を掲げ、公的医療保険制度の整備や最低賃金の引き上げ、教育の充実などを掲げてきました。ただ、国民の要求に見合う政策でありながら、議会の反対もあって目に見える成果はあがっていません。
オバマ大統領の支持率は、不人気だったブッシュ前大統領に匹敵する4割台前半に落ち込み、不支持が過半数に上っています。一方で、議会の現状を支持しないとする世論は8割台を占めています。2年ごとの選挙での議院構成の行方にとどまらず、小選挙区制下での二大政党制が国民の意思を反映できない事態に直面している問題が示されています。
対外政策で大統領が、国際協調を基本にする姿勢を再確認したのは重要です。イランの核開発疑惑をめぐっては「外交にチャンスを与えなければならない」と強調し、対イラン制裁の強化をめざす議会の動向にクギを刺しました。
しかし、新たな飛躍がみえない点は対外政策にも共通しています。アフガニスタンでは「米国の最長の戦争がやっと終わる」として、今年末までの米戦闘部隊の撤退を改めて表明しながら、その後もアフガンでの対テロ軍事作戦を継続するとし、「テロリストが米国を攻撃するのを許さない決意は不変だ」と言明しました。
軍事的覇権主義への固執が根深いと同時に、国際問題を外交交渉によって解決しようとする「二つの側面」(日本共産党第26回大会決議)は、今後もオバマ政権の特徴となることが明らかです。
世論に働きかけるには
議会との距離感が目立った教書でした。これで大統領が“巻き返した”とは言いがたく、議会を“挑発”しただけに終わる可能性もあります。オバマ大統領は、世論に直接に訴えることで局面を変えてきた経験をもっています。今日の事態を打開するにも、国民に大胆に訴えることが必要になります。そのためにも、政権の原点に立ち返った内外政策の見直しが必要ではないでしょうか。