2014年1月29日(水)
きょうの潮流
凍てつく寒さの中、アウシュビッツ解放式典で生存者が恐怖の体験を語っていました。高齢化で減りつづける“語り部”。一方で、収容所跡の博物館を訪れる人の数は増え、若い人の姿が目立っているといいます▼おととい、本欄でホロコーストについて取り上げましたが、書ききれなかったことがあります。戦後、加害国のドイツと被害をうけたポーランドが共同し、子どもたちが同じ内容の歴史教科書を学べるように努めてきたことです▼同様な努力は独仏の間でも積み上げられています。ドイツをはじめ、それぞれの学校でナチスが犯した罪を学ぶ。欧州の国々はそれを歴史教育の中心にすえ、相互理解や戦後平和の礎にしてきました▼ひるがえって、わたしたちの日本です。侵略したアジア諸国と共通の土台をもてず、とくに安倍政権の誕生で韓国や中国との関係は悪化するばかり。いまも公共放送NHK会長の「慰安婦」発言に、内外の批判がひろがっています▼植民地支配下での日本軍の蛮行。領土拡張のために犠牲になった数えきれない命。その歴史の事実を、アジアと共有するどころか、いまだに誤った認識や信念にしがみつき、声高に主張し、傷つけてきた人びとの心をえぐりつづけています▼過去と真剣に向き合う国と、負の歴史を直視できない国。ゆがんだ愛国心や誇りを植え付けられた国民の行く末は不幸で危うい。日本を世界の中で孤立させないためにも、歴史を逆流させる勢力を政治や社会の舞台から退場させなければ。