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2014年1月28日(火)

主張

「慰安婦」暴言

NHK会長の資格が問われる

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 NHKの新しい会長に就任した財界出身の籾井勝人(もみいかつと)氏が先週末の記者会見で、日本軍「慰安婦」問題に関連して「(『慰安婦』は)戦争しているどこの国にもあった」などの発言をして批判の声が高まっています。籾井氏はNHK会長としてではない「個人的」発言としたいようですが、女性の尊厳を傷つけ国際的に問題になっている日本軍「慰安婦」のような問題が「どこの国にもあった」ということ自体、歴史的にも国際的にもなりたちません。特定の政治的立場を隠さない籾井氏が、会長の資質に欠けることは明らかです。

歴史に反する特異な見解

 「(『慰安婦』は)日本だけがやっていたようにいわれるが、戦争をしているどこの国にもあった」「欧州ではどこだってあった」「韓国は日本だけが(『慰安婦』を)強制連行したみたいにいうから話がややこしくなる。(補償問題などは)日韓条約で解決している」

 NHK会長としての公式な記者会見の場で籾井氏から飛び出した発言は、とんでもない暴言です。たとえ個人の発言としても、聞き流しにできないものです。

 日本軍「慰安婦」は、アジア・太平洋戦争のさなか、当時の政府や軍が関与して朝鮮半島などから女性を連行し、軍などが管理する慰安所に閉じ込めて、「性奴隷」として売春行為に従事させたものです。女性の尊厳を傷つけた重大な人権問題として国際的にも批判され、元「慰安婦」などが謝罪と賠償を求めてきました。日本政府も軍の関与を認め、「痛ましいものだった」と認めてきました。

 第2次世界大戦中、軍が組織的・系統的に「慰安婦」制度をつくっていたのは日本とナチス・ドイツだけで、「どこの国でもやっていた」ということ自体、歴史的事実に反します。だからこそ国際社会はあげて日本軍「慰安婦」問題を批判してきたのです。韓国との補償問題が日韓条約で「解決済み」というのも、「慰安婦」問題が表面化したのは条約締結後のため通用せず、韓国政府は繰り返し日本に問題解決を求めています。

 公共放送であるNHKを「代表」し、「その業務を総理する」(放送法)会長として、籾井氏がこうした事実もわきまえず公式の記者会見で発言したことは、たとえ「個人的」な見解としても許されるものではありません。放送法は、「放送の不偏不党」などを求め、「放送事業者」は政治的に公平で、事実を曲げないことを定めています。特異な考えの持ち主の籾井氏が会長の職を続けることは、財界出身で放送とは縁もゆかりもないこと以上に異常なことです。

安倍政権の責任免れぬ

 籾井氏は、安倍晋三政権がNHKの経営委員会に作家の百田尚樹氏ら安倍氏に近い人物を送り込み、その委員会で全会一致選ばれたものです。菅義偉官房長官は籾井氏の発言を「個人としての発言」と片付けようとしていますが、政権の責任は免れません。

 見過ごせないのは籾井氏が同じ会見で、「私の任務は(NHKの)ボルトやナットを締めなおすこと」「秘密(保護)法は、いってもしょうがない」などとNHKと放送のあり方に関する発言を繰り返したことです。安倍政権と籾井会長のままではNHKが不安です。NHKが事実を曲げない報道を貫くか、国民の監視が不可欠です。


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