2014年1月23日(木)
欧州委 米欧版TPPで意見聴取
ISD条項に根強い懸念考慮
欧州連合(EU)の欧州委員会は21日、米国とEU間で交渉が進む環大西洋貿易投資連携協定(TTIP、米欧版TPP)に関連し、導入が見込まれる投資家対国家紛争(ISD)条項への根強い懸念を考慮し、各国から意見聴取する方針を決定しました。3月から3カ月間の予定です。
ISD条項は、投資先の制度や法令により損害を受けたとする外国企業が、それら制度の廃止や損害賠償を求めて当該国を訴える権利を認める規定。欧州各国のNGOや労組、一部の欧州議会からは、環境規制や自国産業保護制度の撤廃につながるとの懸念があがっています。
現地からの報道によると、18日、ドイツ政府の農業改革に抗議するためベルリンで行われたデモにはTTIPに反対する参加者の姿も多く見られました。
欧州委員会のデフフト委員(通商担当)は21日、EU加盟28カ国の貿易、経済担当相に宛てた声明で、「欧州の一部の人々が深刻な懸念を抱いていることは承知している」と述べる一方、ISD条項の導入を求める立場から「投資を呼び込みたいなら、各国政府は投資家を公平に扱うべきだ」と訴えました。
イタリアやフランスでは最近、米国に本社を置くグーグル社やアマゾン社など、徴税逃れが指摘される多国籍企業から自国産業と雇用を守る法案が可決しました。ISD条項の導入により、これらの法律が敵視され廃止となる恐れもあります。
環境団体「地球の友・ヨーロッパ」のデクラーク氏はロイター通信に対し、多国籍企業へのISD条項適用を含む協定の危険性を指摘。「米国の訴訟文化を考慮すれば、企業がISD条項を利用し、あらゆる政策や法令に異議を唱えることは明白だ」と述べました。 (島崎桂)