2014年1月7日(火)
北東アジア平和協力構想 緊張激化のなかで広がる共感(5)
広がる 対話を進める動き
地域の枠組みづくりへ
安倍政権の歴史認識問題や領土をめぐる紛争などで、日中、日韓の両国関係は冷え込んだまま。こうした事態をどう打開するか―民間有識者の間に憂慮の声と対話を開く取り組みが広がっています。
昨年12月、早稲田大学に開設された韓国学研究所の記念シンポジウム。出席した有識者から共通して出されたのは、「対立を乗り越えた和解」(金学俊韓国東北アジア歴史財団理事長)の必要性と「相手を理解する努力の大切さ」(寺島実郎日本総合研究所理事長)でした。
背景には、東アジアが経済・社会・文化では地域統合が急速に進み共同体への展望も語られているのに、外交・安全保障では対立と衝突が危惧されるという「歴史的な分岐点にさしかかっている」(所長の李鍾元(リージョンウォン)・教授)という認識があります。
「和解」と「理解」のためには、なにが必要か。祝辞を述べた李丙h(イビョンギ)駐日韓国大使は「過度な民族主義や不信、互いに妥協しないといった姿勢で一貫し、戦争の惨禍へとつながった歴史的失敗を教訓にすえ、アジアの世紀が希望と活力、繁栄の世紀となるよう両国が先導していく必要がある」と提起しました。
東アジアへも
北東アジアの対話を進める動きはこれだけではありません。
言論NPOは昨年12月4日に「新しい民間外交イニシアチブ」を発足させました。同「イニシアチブ」は、「日中、日韓だけでなく、東アジアの新しい秩序作りに向けて動く」(工藤泰志代表)との方針のもと、今年5月には日韓、7月には日中の対話を予定。加えて東アジアの問題のマルチ対話を予定しています。
夢物語でなく
「地域の枠組みをつくるというのは、夢物語でなく、現実にやってきていることです」。李教授は本紙のインタビューにこう答えました。
李教授は「すでに東アジアでは1990年代半ばから、最初は日韓の連携で中国を巻き込みながら東アジア地域を作ってきた経験があります」と述べ、ASEAN(東南アジア諸国連合)の発展のなかで発足した「日中韓首脳会議」の動きを紹介します。同会議では、常設の協力事務局をソウルに置き、3カ国間の相互信頼の醸成、安全保障分野における対話の強化などを検討してきました。
「中国の問題でも、日米で対抗するとか、日本の国防力の増強で対抗するという古典的発想ではなくて、マルチ(多国間)で対応するのが21世紀的です」と述べた李教授。日本共産党が提唱する「北東アジア平和協力構想」について、「共通するところは多いですね」と話しました。(つづく)