2014年1月6日(月)
北東アジア平和協力構想 緊張激化のなかで広がる共感(4)
衝突回避へ民間レベル対話
挑発の禁止・人的交流を
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昨年1月末、東シナ海の公海上で中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊護衛艦に対し、射撃の前提となる火器管制レーダーを照射したというショッキングな報告が明らかにされました。
11月23日には、中国が尖閣諸島上空を含む東シナ海に防空識別圏を設定するという危険な行為に出て、緊張がいっそう激化。日本共産党は撤回を求める見解を発表し、日本の実効支配下にある尖閣諸島を包含していることや、公海上の広い空域を自国の「領空」のように扱っていることを批判しました。
元外務省高官の一人は「海上でも相互の了解がないという本質的に危険な状態だ。それが空では軍と軍の対峙(たいじ)となり、偶発的衝突を回避するための時間があまりに短い」と指摘。「最大の問題はコード・オブ・コンダクト(行動規範)ができていないという危険だ」と警鐘を鳴らします。同氏は、例えば日本とロシアの間の現場司令官レベルでは「レーダー照射は攻撃とみなす」という相互了解が存在し、そのため危険な行動は抑制されると解説します。
協議途切れる
日中政府間では、海上での偶発的衝突を回避するための海上連絡メカニズムの構築で防衛局長級の協議が昨年4月に行われたものの、成果はあがらず、協議は途切れたままです。
一方、政府間の対話が進展しないもとで、民間レベルでの対話の試みが始まっています。
笹川平和財団は「日中海上航行安全対話」の取り組みを進めています。昨年10月21日、北京で行われた第2回会合では、信頼醸成と危機管理が極めて重要だという認識で一致し、「情報の交換・相互の提供、人的交流、挑発行為の禁止、通信の改善」などで具体的に対話が進んだといいます。
間一髪の状態
同財団の日中友好基金事業室長を務める于展氏は「専門家の話や映像資料を見ると、尖閣沖では、日中の3000トン級の船が最接近距離で5、6メートルに接近している。間一髪の極めて危険な状態にある」と指摘。「緊急の“止血”と対話のチャンネルを開くのが私たちの役目」と述べます。1月に第3回会合を東京で開く予定です。
言論NPOは10月に北京で「第9回北京―東京フォーラム」を開催。「両国は戦争に道を開くどんな行動も選んではいけない」という不戦の誓いを含む「北京コンセンサス」を確認しています。
安全保障シンクタンクの日米同盟研究の専門家の一人もこう述べます。
「リアリズムの観点から見れば、どこかで規範作りをしておかないと持たない。あらゆる手段を使ってルールを作るのは非常にクレバー(賢い)なやり方だ。日中衝突を懸念するアメリカも歓迎するだろう」
(つづく)