2014年1月3日(金)
主張
日本経済2014
暮らし守る「好循環」へ転換を
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」がすっかり色あせるなか、新年を迎えました。国民大多数は「アベノミクスの恩恵」などはなく、むしろ生活必需品の物価上昇が生活の足元を直撃しています。4月からの消費税増税への不安も増しています。「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げる安倍政権では、暮らしの改善も経済の再生もできないのは明らかです。暮らしを直接応援する政治への転換が切実に求められています。
色あせる「アベノミクス」
新年からの景気回復に「期待できない」49%、「期待できる」39%―。昨年末の「日経」の世論調査です。旧政府系調査機関の日本リサーチ総合研究所は「生活不安度指数」が大きく悪化した調査結果をまとめ、「雇用、収入環境の改善が進んでいない状況での(消費税)増税決定が、物価上昇の高まりや景気への悪影響として、消費者心理にマイナスに働いた」と分析します。法人税減税などで大企業を支援すれば、やがて労働者・家計にまわる“おこぼれ経済学”の完全な行き詰まりです。
にもかかわらず安倍政権は、破たんが明白な大企業優遇政策を改める姿勢はみじんもありません。昨秋の国会で強行した国家戦略特区法、産業競争力強化法などを次々具体化し6月には新たな「成長戦略」をつくる構えです。狙いの中心は雇用、医療・介護、農業などの規制撤廃です。雇用と権利、命と健康、食の安全などを守る制度を“大企業のもうけを邪魔する岩盤規制”と決めつけ、取り払うことは、国民を置き去りにした大企業優遇政治の最たるものです。
規制撤廃は経済成長にも逆行します。派遣労働の無制限拡大、解雇自由化など雇用破壊は、不安定雇用と長時間労働をひどくする「賃下げ政策」です。「賃上げ」を語る安倍政権の姿勢にも反します。
不安定雇用は企業の成長にとっても足かせです。昨年、全日空が客室乗務員を契約社員から正社員に転換したのも、優秀な人材確保のためでした。若者を使い捨てる「ブラック企業」について政府が調査を始めたのも無法な働かせ方が社会の健全な発展にいかに有害かが浮き彫りになったからです。
大企業の目先の利益確保のためだけに「アベノミクス」を推進することは、国民の暮らしを壊し、日本経済再生の土台まで掘り崩す「悪循環」でしかありません。
昨年のベストセラー『里山資本主義』(角川書店)は、大企業中心の「グローバル経済」「マネー資本主義」に代わる道として、地域の特色を生かす経済に可能性を探る一冊として注目されたものです。“大企業の国際競争力強化こそがすべて”とする、いびつな経済の仕組みを問い直すときです。
経済力をいまこそ国民に
国民のふところが温まり購買力が向上する内需主導の「好循環」へ転換することが必要です。
大企業がため込んだ内部留保を、労働者、中小企業、地域経済にきちんと還元・還流させることを通じて、日本経済の健全な成長・発展に道を開くときです。
日本経済は、健康で文化的な暮らしを国民に保障する十分な力をもっています。その経済力を国民のために生かすため、大企業・財界中心の政治・経済のゆがみをただすたたかいを大きく広げていこうではありませんか。