2013年12月31日(火)
重度知的障害、重複障害者
母親が介護96%
大阪の市民団体 “自助限界、解消を”
重度知的障害や重複障害のある人たちの約9割は家族と同居し、母親が介護する割合が96・3%であることがこのほど、わかりました。「大阪障害児・者を守る会」(播本裕子会長)の調査によるもの。対象は、大阪府内に住む障害児者1620人です。
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調査からは、障害児者の暮らしを支える社会保障制度がぜい弱なため、家族介護に頼らざるを得ず介護の大半を担う母親は疲弊しきっている実態が浮かび上がりました。
家族と同居する障害者が87・7%を占め、グループホーム等に住む人は8・8%でした。ヘルパーなどを活用して一人暮らしをする人は、わずか0・5%にとどまっています。
介護者の健康状態についての設問では、「よく肩がこる、痛い」と答えた人は60・7%。「朝起きたとき疲れが残っている感じ」は57・1%でした。97%の親が何らかの体調不調があると回答しています。
大阪千代田短期大学の山本敏貢副学長は「女性の健康に関する各種調査結果と比較して、障害児者を介護する人の健康は深刻な状態だ。家族中心の介護は限界を迎えている」と指摘。「介護者の負担を解消する福祉施策が必要だ」と訴えます。
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「わが子との将来の関係」についての設問で、「親と子は別々の生活をしたい」と回答した親は43・4%。「自宅で親と子で一緒に住みたい」は39・7%で「一緒にケアハウスなどの施設に入りたい」が19・4%でした。
年代別でみると、親の年齢が上がるに従って別居を希望。50歳代でピークとなります。30歳未満の親で「一緒に住みたい」「一緒に施設に入りたい」と回答したのは、合わせて65・0%を占め、「別々の生活」より30ポイントも上回っています。50歳代では、「一緒に住みたい」「一緒に施設に入りたい」は52・0%で、「別々の生活」より1・6ポイントだけ多くなります。
ところが、70歳代になると、「一緒に住む」「一緒の施設に入る」を希望するのは69・6%。「別々の生活」より31・6ポイントも上回ります。
播本会長は「地域に障害者の生活を支える資源が少ないため、親が高齢に伴い自分で介護できなくなっても、第三者に依頼することすらできない状態になっている」と指摘します。
政府の批准が決まった国連の障害者権利条約は、障害者に障害のない人と同じ程度の暮らしをする権利を認めています。
播本会長は「障害者や家族の実態は、障害者権利条約のめざす水準からかけ離れている。障害者と家族は、安倍政権が求める“自助”をやりつくしている。国と自治体の公的責任で、権利条約に見合う社会になるよう施策の整備が必要だ」と強調します。