2013年12月29日(日)
日本製原発をトルコへ
いいのか!?危険の輸出
トルコへの原発輸出に向け安倍晋三政権は、来年1月のエルドアン首相訪日を弾みに、早期の日・トルコ原子力協定承認を狙っています。危険満載のたくらみに、両国市民から批判が上がっています。(佐久間亮)
地震大国 耐震性も不安
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問題となっているのは、2019年までに黒海沿岸の都市シノップに110万キロワット級の原発4基を建設するというプロジェクト。総工費は220億〜250億ドル(約2・2兆〜2・5兆円)と見積もられています。
安倍首相の10月末のトルコ訪問で、三菱重工や仏企業アレバを中心とした企業グループが、商業契約の大枠合意に達しました。
海外の巨大インフラ(産業基盤)プロジェクトを調査している田辺有輝氏(「環境・持続社会」研究センター)は、世界有数の地震国トルコへの原発輸出には多くの問題があると批判します。(表)
同国では1900年以降マグニチュード(M)6以上の地震が72回発生。約1万7千人が亡くなった99年のトルコ北西部地震(M7・8)では変電設備が深刻な打撃を受け、完全な復旧に10日以上かかりました。
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田辺氏は、トルコの耐震化は進んでおらず「仮に日本の原子炉の耐震性が高かったとしても、地震で周辺インフラが寸断される危険性がある」と指摘。送電が途絶えれば福島原発のような事故が起きかねないと懸念します。
原発の経済性にも疑問を呈します。ロシアが受注したアックユ原発は建設費用が50億ドル(約5千億円)増加。トルコの専門家も、長期的には他のエネルギー源に比べ割高になると指摘しているといいます。
日本の国会に要請書
「人類誕生前から続く黒海の海流・生態系が原発の温排水によって永久に破壊されようとしている」
シノップの市民団体が11月に日本の国会に提出した要請書は、古代ギリシャから美しい港として知られた街に原発が輸出される憤りを訴えます。日本の国会向けの反対署名は、開始1週間でシノップ市民の1割に当たる2千人を超えました。地元市長も2009年の当選以来、原発反対を掲げています。
トルコの都市部では5月以降、強権的なイスタンブールの緑地再開発計画を発端に大規模な反政府デモが頻発しました。
トルコ政治が専門の岩坂将充氏(日本学術振興会特別研究員)は「デモの中心となった学生層は環境意識が高く、原発にも反対が多い」と指摘。反政府デモが来年3月の地方選、8月の大統領選に与える影響に注目しています。
岩坂氏はまた、トルコ政府が原発に固執する背景には、燃料分野で国際収支を改善させることとともに、原子力技術を保有し安全保障上のカードとする意図もあると指摘します。
身内だけの断層調査
原発の安全評価の要となる建設予定地の断層調査を、三菱グループの会社が受託していることも、日本共産党の笠井亮議員の質問(11月27日、衆院外務委)によって明らかになっています。
安倍政権は、シノップ原発予定地の断層調査を、日本原子力発電に委託。調査費は13年度予算で11億2千万円に上ります。同社はさらに3社に再委託。その一つが三菱グループのダイヤコンサルタントです。原発を輸出する三菱重工のグループ企業が安全評価をする、お手盛り評価です。
日本原電とダ社は、原子力規制委員会が指摘した敦賀原発直下の活断層を、いまだに認めていません。
笠井議員の質問では、原子力安全・保安院の廃止後、原発輸出に公的信用機関が融資する際の安全確認体制が存在しないことも明らかになっています。田中良生経済産業政務官は「経産省が中心となって確認する」と発言。推進機関が融資審査にかかわる、ここでもお手盛りです。