2013年12月27日(金)
きょうの潮流
今年の10月でした。来日中のケリー米国務長官とヘーゲル米国防長官がそろって千鳥ケ淵の戦没者墓苑を訪ねました。神妙な様子の2人は長身を折るように、献花台に花束を手向けました▼先の大戦後、靖国神社から500メートルほど離れた場所につくられた国の施設。A級戦犯をふくむ軍人らを合祀(ごうし)する靖国と異なり、海外戦没者の身元不明や引き取り手のなかった人たちの遺骨を収めます▼米閣僚の千鳥ケ淵献花は、靖国参拝に固執する安倍首相に衝撃をあたえました。日本の侵略戦争を美化する靖国への参拝は、中国や韓国との関係を悪化させ、米国のアジア戦略にも影響を及ぼす。そのために、けん制したのでは、とみられています▼波紋のひろがりは、靖国参拝がいかに国際平和を乱すかを示したものでした。それを押し切って、仕事納めとばかりに靖国に足を運んだ安倍首相。内外の多大な犠牲者に心を寄せず、みずからの信条を押し通す傲慢(ごうまん)ぶりです▼中国政府はすぐに「強烈な抗議と厳しい非難」を表明。韓国のメディアは「メガトン級の悪材料」と伝えました。そして、米大使館からは「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったことに、米国政府は失望している」▼政権発足から1年。内外の批判をよそに、危険な本性をむきだす首相。こがれた靖国参拝も、戦争する国に向かうための一環なのでしょう。これ以上、日本を孤立させ、ふたたび破滅の道に進ませない。たたかいの闘志がわいてくる年の瀬です。