2013年12月26日(木)
きょうの潮流
中南米で女性が道を歩いていると、見知らぬ男性がこんな言葉をかけてきます。「君のお父さんは庭師だね。そうじゃなきゃ、君のように美しいバラが咲くはずがない」▼女性と見たら、すぐに声をかけ、ほめちぎる「ピロポ」という習慣です。女性たちの反応はほほ笑んだり、にらんだりさまざまですが、最近、「ピロポ」はセクハラだと反対する声が強まっています▼容姿の話題はたとえほめ言葉でも不快な思いをするものです。男性にそれを分かってもらうために、女性たちが男性に「逆ピロポ」を発する場面を含んだビデオが作られた国もあります▼女性団体は、「ピロポ」は中南米に根強く残る「マチスモ(男性中心・女性蔑視の考え)」の表れだといいます。一方、「ピロポ」は芸術作品だと主張するグループも現れるなど、男性の意識が変わるにはまだまだ時間がかかりそうです▼パブロ・ネルーダを生み、「国民みんなが詩人だ」と豪語するチリも街頭は「ピロポ詩人」だらけ。でも、今年の大統領選は画期的でした。2006年の選挙では中道左派のバチェレ氏が初の女性大統領に当選。今回は、大学無償化や格差解消などを掲げ当選したバチェレ氏と最後まで争った右派候補も女性。決選投票が女性同士で行われたのは初めてでした▼両者は「女性」を売り物にせず、政策で争いました。「マチスモ」が根強くても女性が大統領候補になり、当選するのが特別視されない―これも中南米とチリで進む変化のもう一つの側面です。