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2013年12月23日(月)

主張

原爆症認定見直し

司法の判断 行政は無視するな

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 これが血の通った行政かと、怒りを禁じ得ません。広島や長崎への原爆投下で被爆しいまも苦しむ人たちに、病気が原爆放射線の影響によるものと認める原爆症認定制度の見直しで、厚生労働省が度重なる司法の判断に背を向け、狭い認定基準にこだわり続ける方針を決めたのです。認定者数が大幅に拡大することは考えにくく、被爆者団体などは「残留放射線の影響や被爆の実態をふまえて認定してきた司法判断を無視するものだ」と抗議の声をあげています。

被爆者に裁判を強いる

 広島や長崎に投下された原爆では、直後に爆風や熱線、強烈な放射線で多くの人が亡くなっただけでなく、生き残った人も被ばくした放射線などの影響で70年近くたった現在も苦しめられています。「がん」などの発生率も高く、被爆者の病気を放射線の影響による原爆症と認め、援護の手を差し伸べることが求められています。

 政府は長年にわたって原爆症の認定に消極的で、被爆者の願いに応えようとはしてきませんでした。被爆者がやむにやまれず裁判所に認定を訴えた集団訴訟では国の敗訴が大多数となり、政府は2008年に認定基準の緩和を余儀なくされました。それでも申請者の半数が却下されるという厚生労働省の厳しい審査が問題となり、認定制度そのものの見直しが課題になってきました。

 厚生労働省の検討会が3年間議論したうえでこのほど発表した最終報告書は、司法判断よりも認定範囲が狭い行政認定を「司法と行政の役割の違い」だと追認し、司法と行政との乖離(かいり)を解決することを放棄したものです。それを受け、厚生労働省が決めた新しい認定審査の方針は、「がん」や白血病は爆心地から3・5キロメートル以内の被爆なら原則として原爆症と認定するものの、心筋梗塞や甲状腺機能低下症は2キロメートル以内、白内障は1・5キロメートル以内などと細かく定めるものです。被爆者の立場に立った「積極認定」に背を向け、行政の認定に不満なら裁判に訴えよと被爆者を突き放したのも同然です。司法判断と行政認定との乖離を判例の趣旨に沿って埋めるべき、法治国家の基本的なルールに反します。

 行政が裁判で敗訴を重ねたことへの反省もなく、被爆者の苦しみにも応えようとしない根本には、原爆被害の実態から認定のあり方を考えようとしない姿勢があります。初期放射線量にこだわり、残留放射線や内部被ばくの影響はいまの科学では解明できないとしてほとんど無視して、爆心地から遠い距離で被爆した人や原爆投下後に入市した人を切り捨ててきました。「科学の限界」という口実が被爆者援護の限界であってはなりません。

実態直視し抜本改善を

 集団訴訟終結にあたって被爆者と国が交わした「確認書」は、「厚生労働大臣と被団協・原告団・弁護団は、定期協議の場を設け、今後、訴訟の場で争う必要のないよう、この定期協議の場を通じて解決を図る」としました。定期協議は3回しか開かれていません。

 被爆者が原爆症認定を求めるのは、国が起こした戦争で被害にあったことを国が認め償ってほしいと願うからです。政府がその願いに応えるなら、実態を直視して認定制度を抜本改善し、被爆者援護を充実させることが不可欠です。


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