2013年12月22日(日)
秘密保護法廃止を
怒りのドラムデモ 井手実さんに聞く
こんなことで負けない
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自民・公明の与党が秘密保護法を強引に成立させた6日深夜、国会正門前を埋めた1万人近い人たちに、「こんなことで負けやしない」と訴えた人がいます。抗議行動を呼びかけた「怒りのドラムデモ」の井手実(いで・みのる)さん(34)です。その井手さんに話を聞きました。(聞き手 高橋拓丸)
―「こんなことで負けやしないって姿を見せつけてやります。みなさん、力を貸してください」。6日夜の訴えを私も聞きました。
あのアナウンスは、とっさの思いでした。安倍自民党が“ここで民主主義は終わりだ”とでも宣言するようなことをやったけれど、自主的に集まった多くの人たちが「そうじゃない。自民党の終わりが始まるんだ」と奮起していました。みんなの怒りに背中を押されて出た言葉です。知恵や行動をふりしぼって、秘密保護法を廃止させたい。
コールも変化
―臨時国会最終盤の5日と6日、国会正門前の行動をよびかけたのは、なぜですか?
人が多く集まれるのと、正面きって国会の前でたたかいたかったからです。何が秘密かもわからない。たまたま知った事実をブログやツイッターに書いたら逮捕されるかもしれない。市民の調査活動や抗議行動が権力から監視され続ける。しかも強行採決の連続。中身をみても、やり方をみても、こんなめちゃくちゃな法律はないですよ。
2日間で19時間半、抗議行動をしました。コールの内容も状況にあわせて変化しました。5日は「強行採決絶対反対」が中心でした。6日に入ってからは独裁的な安倍自民党に対しての抗議という面が自然に強くなり、「自由を守れ」「ファシスト許すな」というコールになりました。
国会周辺にあれほどの人が駆けつけたのは、福島第1原発事故以降全国で巻き起こったデモ、各地の電力会社前や首相官邸前、関西電力大飯原発(福井県)ゲート前抗議をはじめ、ヘイトスピーチ(民族差別をあおる憎悪表現)に反対する抗議などの取り組みが結実したんだと思います。行動に参加するハードルが下がり、「ここで声をあげてもいいんだ」という認識が広がりました。
政府が再稼働できた原発が大飯原発だけなのは、紛れもなく全国の運動の力です。今はすべての原発が止まっています。また、2013年2月に新大久保から始まったヘイトスピーチに反対する大規模な抗議が、ニュースや院内集会をへて世論を揺さぶりました。抗議を続けてきた多くの人たちの知恵や行動が結集し、今につながっているんです。
社会と政治を揺さぶることを僕たちはやってきた。その実感が高まってきた時期に、ファシズムを感じさせる安倍政権ができて、秘密保護法案が出てきた。「こっちも本気でいこう。培った力を全力で使おう」という思いでした。
運動はさらに
―「怒りのドラムデモ」とは?
原発に反対する行動に、ドラムをたたいて自主的に参加していた人たちが2011年10月に集まって始めたのが「怒りのドラムデモ」です。内容はその都度話され、スタッフも変動します。内装の仕事をしている僕なんか、現場からまっすぐ抗議行動に参加するのでドラムを持っていけず、デモ申請や誘導をしたりしています。
自民党本部の圧力で沖縄の自民党が寝返って、米軍普天間基地の名護市辺野古への移設を容認しました。来年1月には名護市長選もあり、「安倍自民党を許すな」という声が広がるでしょう。全国でも原発再稼働、消費税増税、TPP(環太平洋連携協定)に反対するさまざまな運動がもっと起こると思うんです。安倍首相はみずから国民の怒りに火をつけている。僕たちがより良く生きるために、連続発火する怒りを絶やすことなく大きくしたいと思っています。