2013年12月11日(水)
安倍首相デタラメ発言
秘密保護法 「よい法律にできた」と言うが…
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安倍晋三首相は9日の記者会見で、臨時国会最終盤に強行につぐ強行で成立させた秘密保護法への国民の批判が厳しいことから、「私自身がもっともっと丁寧に時間をとって説明すべきであったと反省もしている」などと異例の弁明をしました。同時に、秘密保護法自体は、維新、みんななどとの「修正」で「よい法律にすることができた」と強弁しました。しかし、首相の発言は具体的根拠を示すことができないばかりか、法律そのものや審議の経過からみてもデタラメな内容でした。その中身を検証すると―。
「秘密の範囲広がらない」
際限なく広がる危険性
首相は「今ある秘密の範囲が広がることはありません」と根拠なく言い切りました。
しかし、「行政機関の長」が勝手に「秘密」を指定できる構造はそのまま。「秘密」の定義も、防衛、外交から特定有害活動やテロ防止まで広範で曖昧なため、何でも指定できる危険があります。
首相は「(いまある)特別管理秘密の9割が衛星情報だ」と強調しますが、特別管理秘密は「事項の名称」が示されているだけで、「何が秘密かも秘密」で検証もできません。なかには「警備局長が別に定める会議において議事とされた事項」(警察庁)、「当庁が提供する情報・資料」(公安調査庁)など正体不明のものも多数あります。
また、衛星情報が国民生活に関係がないかのようにいうのは正しくありません。福島第1原発事故の映像を公開しなかったように、死活的局面でも軍事優先で秘密にする恐れが十分あります。
首相自身、「提供された情報は第三者に渡さないのが情報交換の前提」と強調しました。アメリカとの戦争協力をより密接にする中で、重大な情報が秘密として拡大することは明らかです。
「一般国民は巻き込まれない」
身辺調査と厳罰で包囲
「一般の方が巻き込まれることも決してありません」。首相はあたかも「特定秘密」を扱う公務員だけが処罰対象であるかのように装い、国民の反発をかわそうと躍起です。しかし、秘密保護法のどこにもそんな保障はありません。
同法は、秘密の「取得」から、漏えいを話し合う(共謀)、そそのかす(教唆)、あおる(扇動)行為までを厳罰に処します。秘密に関わる公務員はもちろん、行政から秘密を提供された民間企業や研究機関、果ては秘密を知ろうとする取材者や市民運動に取り組む人たちまで、広く国民各層が処罰の対象となります。
この点を問いただした日本共産党の仁比聡平参院議員に対し、首相自身が「捜査機関において個別具体的な事案に即して判断すべき事柄だ」(11月27日)とのべ、一般国民が処罰されることを否定していません。目的がスパイ行為でなくても、共謀、教唆、扇動が処罰されることは、森雅子担当相が「はい、そうです」と認めました。
処罰に至らなくても、秘密を扱えるかどうかの「適性評価」は、公務員だけでなく、民間の労働者にも及び、家族を含むプライバシーが丸裸にされます。
国民生活は「巻き込まれない」どころか、身辺調査と厳罰の網に包囲されるのです。
「秘密を取り扱う透明性増す」
いっそうの秘密国家に
首相は、秘密保護法によって「(秘密の取り扱いについて)透明性が増すことになる」と強弁しました。
しかし、秘密保護法では、「秘密」の取り扱いで第三者が関与する「透明性」あるルールはありません。わずかに「修正」で、「独立した公正な立場」で「検証」「監察」する「新たな機関の設置」などを「検討」するだけ(付則9条)です。
これについても、提案した自公維み4党で答弁はバラバラ。採決間際に首相や官房長官が駆け込み的に発表した「第三者的機関」(図参照)なるものも、すべて政府内部につくるもので、「第三者」どころか“お手盛り機関”です。
首相は、核持ち込み密約などを持ち出し、「私も密約について説明を受けなかった。しかし、今後は変わる。総理大臣は情報保全諮問会議に毎年報告するので、知らない秘密はありえない」とのべました。
とんでもない話です。首相自身が知っているだけでどうして国民に「透明」などといえるのか。米公文書を突きつけても密約の存在を否定し、国民を欺き続けてきたのが自民党政府です。首相も「当時極秘とした判断は、日米同盟の重要性において、そういう判断をした」(4日)と当然視し、国民をだましてきた反省が全くありません。
密約は官僚が引き継ぎ、閣僚にも選別して報告していたことが明らかになっていますが、秘密保護法ができても「内規の骨格は変わらない」(岸田文雄外相)としています。
「透明性を増す」どころか、日本はいっそうの秘密国家になってしまいます。
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