2013年12月10日(火)
きょうの潮流
12月10日は世界人権デー。1948年のこの日、パリで行われた第3回国連総会で、第2次世界大戦の惨害を二度と繰り返すまいと「世界人権宣言」が採択されました▼「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」で始まる全30条は、民族や宗教、政治体制の違いを超えて人類の普遍的な価値を見いだした画期的な宣言でした▼この起草に国連人権委員会の委員長として重要な役割を果たしたのが、エレノア・ルーズベルト(1884〜1962)です。夫はアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルト▼裕福な家に生まれながら幼くして両親と死別したエレノアは、人の悲しみと孤独に心を寄せる少女でした。ニューヨークの貧困地域でセツルメント運動に携わり、結婚後は、スラム街や工場、炭鉱などどこへでも出かけて、子どもを膝に乗せ、労働者の苦境に耳を傾けました。人種差別に反対してアフリカ系アメリカ人を友とし、自身の記者会見に率先して女性記者を入れることで、働く女性の地位向上を後押ししました▼その見聞は、ルーズベルト政権の女性やマイノリティー、貧困層に関わる政策に大きな影響を与えたと言われます。エレノアは第2次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容にも強く反対しました▼「平和を語るだけでは十分ではない。平和を信じなければならない。また信じるだけでもいけない。それを勝ちとらなければならない」。今、エレノアの言葉をかみしめます。