2013年11月27日(水)
障害者を年齢で差別しないで 介護保険優先は違憲 (下)
代替利用は困難
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障害者が65歳になると介護保険制度を優先して使わなければならないとする障害者総合支援法第7条。「障害者の間で大問題になっている」。大阪府吹田市の金澤秞子さん(72)は、こう指摘します。
「障害に伴う支援を得るために利用料が発生するのは違憲だ」として訴えた障害者自立支援法違憲訴訟の元原告の一人です。
同訴訟団と国は2010年1月、自立支援法の廃止と新法制定、住民税非課税世帯は利用料を無料とする約束を盛り込んだ「基本合意」を結び、和解しました。
同訴訟団は「基本合意」で、新法制定に当たって介護保険優先原則の廃止を求めています。しかし、自立支援法にかわって今年4月に施行された障害者総合支援法には、介護保険優先原則が残されました。
ニーズ反映は
同訴訟団と国は21日、「基本合意」の適正な履行状況を確認するため定期協議をしました。金澤さんは「障害者の大半が貧困状態にあり、65歳で収入が増えることはほとんどない。親の高齢化や死去で公的なサービスの必要度はむしろ高まる」と指摘し、「介護保険サービスは障害者個々の特性やニーズにこたえるものではない」と訴えました。
重度の筋萎縮症の岡野三千代さん(62)=滋賀県大津市=は年金で生活。現在は、障害福祉施策で月30時間の家事援助と外出時の移動に電動車いすなどを無料で利用しています。「この先、加齢とともに2次障害が出るでしょう。介護保険になると利用料が発生するので不安だ」
介護保険と障害福祉施策では、利用料の自己負担のあり方だけでなく、給付内容も異なります。
岡山市に住む視覚障害者、岡崎茂明さん(62)は現在、月41時間の家事援助と50時間の行動援護の給付を利用。「65歳で介護認定を受けたら要支援1か2にしかならず、必要な介護給付を出してもらえない。岡山市の場合、要介護5でなければ、障害福祉施策の上乗せをしない。不合理だ」と改善を求めます。
介護保険優先原則は本来、障害者福祉施策の給付と同等以上の介護保険給付が保障されている場合に限るもの。札幌市の精神障害のある女性(68)は65歳を過ぎても、障害福祉施策の給付だけを利用しています。
「精神障害者を支援する会」の細川久美子専務理事は「女性に妄想などがあり、障害福祉施策下で精神保健福祉相談員との連携を常にとる必要があると、市に訴えた結果だ」と説明します。
欠陥ある制度
そもそも介護保険は認定や給付が不備で、さらに安倍政権による改悪がねらわれています。その欠陥だらけの制度を高齢化する障害者に押し付けるのが、介護保険優先原則です。岡山市の浅田達雄さん(65)は、同原則は違憲だとして訴訟をおこしました。
日本共産党の高橋ちづ子衆院議員は国会で、浅田さんが障害福祉施策の給付を打ち切られた問題にふれ、介護保険優先原則の廃止を追及。田村憲久厚労相は「介護保険で代替できるサービスか疑問。そういうことがないように周知徹底していかないといけない」と回答しています。
(おわり)