2013年11月26日(火)
障害者を年齢で差別しないで 介護保険優先は違憲 (上)
死の恐怖すら感じた
「障害者が65歳になると障害福祉施策から介護保険サービスに切り替えられ、不便になる。この介護保険優先原則は憲法違反だ」―。岡山市の男性(65)は9月、こう訴えて提訴。岡山地裁で27日、行われる第1回口頭弁論に、全国の障害者や関係者が注目しています。(岩井亜紀)
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提訴したのは、脳性まひで手足に重度の障害がある浅田達雄さんです。
一人暮らしの浅田さんは65歳になる2月の誕生日の2日前まで、障害福祉施策に基づき、移動介護26時間を含む月249時間の重度訪問介護を支給されていました。1日7〜8時間利用。朝、昼、晩の3回、ヘルパーが数時間連続の見守りの中で家事援助や身体介護を行っていました。
時間細切れに
ところが、障害者が65歳になると、それまで利用していた障害福祉施策に基づく介護給付ではなく、介護保険に基づく給付を優先して利用しなければなりません(障害者総合支援法第7条・介護保険優先原則)。
浅田さんは「介護保険制度は重度障害者にとって、これまで利用していた障害福祉施策とは介護の種類が変わり時間が細切れになるためそぐわない」と強調します。
介護保険制度で要介護5と認定され、朝の支援は、身体介護として1単位(45分)と1単位(20分)の生活支援を2単位、合計85分に変更に。しかし、ヘルパーはこれまで同様の介護をするため超過時間分は無償となります。「負担をかけて申し訳ない」と浅田さんは話します。
障害福祉施策の利用料は運動で2010年4月から、住民税非課税世帯は無料に。以来、浅田さんも無料で利用していました。一方、介護保険では、利用料の原則1割を自己負担。浅田さんの場合、月1万5000円の支払いが発生しました。
浅田さんは65歳の誕生日を迎える3カ月ほど前から数回、「これまでと同様の暮らしができなくなっては困る」と市に相談していました。ところが、介護保険申請をしなかった浅田さんに対し市は、誕生日の数日前に、重度訪問介護給付の不支給決定を出したのです。
浅田さんは介護申請をし、福祉サービスの上乗せを要求。支援者らとともに市と交渉を重ね、市は決定を3回変更しました。現在は、介護保険制度に障害福祉施策の支援を上乗せして移動介護26時間を含む153時間の給付を行っています。
事情に応じて
呉裕麻(おー・ゆうま)弁護団長は「市の不支給決定を前に、死の恐怖すら感じた浅田さんがいた。総合支援法第7条は、憲法25条が定める生存権を侵害している。年齢で差別することは、憲法14条の平等原則に違反する」と指摘。さらに、市が浅田さんの支給決定を数回変更した点や、自治体や対象者によっては65歳をすぎても介護保険を使わず障害福祉施策の利用が認められるなど判断が異なる点から、「総合支援法第7条は不安定な制度設計だ」として同条項撤廃を主張します。
その上で、呉弁護士は「障害者福祉と高齢者福祉は別個の制度であり、個々の事情に応じて選択できる仕組みでなければならない」と強調します。
(つづく)