2013年11月21日(木)
岩手・陸前高田市 かさ上げ直面する困難
地権者散在 未同意3割に
市側は国に特例制度新設求める
東日本大震災から2年8カ月が過ぎました。津波などで死者・行方不明者約2200人と大きな被害を受けた岩手県陸前高田市(戸羽太市長)は、被災者支援制度の充実に先進的に取り組んできました。しかし、住宅再建の前提となる土地のかさ上げに関して、膨大な地権者が存在するなどの困難に直面しています。(佐藤幸治)
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日本共産党市議団の提案もあり、陸前高田市は被災者の生活再建に向けて市独自の支援を進めてきました。国の支援は、1世帯当たり100万円の基礎支援金と、加算支援金として最大200万円ですが、市と県でさらに200万円の支援をしています。
市の支援制度を受けて持ち家を再建することを決めた男性(78)は、妻が特別養護老人ホームに入所しています。住宅再建支援や、1年延長された医療費免除、市独自の国保税の減免がなかったら、「生活も自宅の再建もできない」と話します。
一方で、高台の造成工事で出た残土で市街地を形成する区画整理事業では、事業に関係する地権者が2000人を超えるという困難に直面しています。
住宅再建を急ぎたい市では、用地売買の交渉の前にかさ上げ工事の同意を得ることにしていますが、地権者は北海道から九州まで各地に散在し、津波で家族全員が亡くなった世帯では相続人が多数いるなど、同意を得るのが容易でない事例もあります。
かさ上げ予定地の中心市街地部分では、7割の地権者から承諾を得ましたが、「残り3割の利用できない土地が虫食い状に点在しているので、このままだと工事が効率よく進まない」と、市建設部の須賀佐重喜(さえき)部長は説明します。
このままでは復興が遅れるとして市は、国に対して、承諾が得られていない土地を含め、私有地に残土を一時的に仮置きする形で利用できる特例制度の新設を求め、署名運動にも取り組んでいます。須賀部長は「国はこうした特例制度は(個人の)『財産権を侵す』といって難色を示しますが、陸前高田市は大災害で市街地が壊滅した特殊な自治体です」と言います。
日本共産党の伊勢純市議は「市職員は、他県などからの派遣職員を含め、『被災者の力になりたい』と頑張っています。国は被災地ごとの実情に合う後押しをしてほしい」と話しています。
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