2013年11月21日(木)
秘密保護法案
ごまかしの「修正」協議
ごまかしの密室「修正」協議で秘密保護法案の強引な衆院通過を狙う自民、公明両党と手を貸す、みんなや維新の動き―。広範な国民に怒りと批判の声が広がっています。審議するたびに明らかになる法案の危険と「修正」協議の問題点を見ました。
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次々露呈する問題点
国会審議を通じ秘密保護法案の問題点がますます明らかになっています。
20日の参院国家安全保障特別委員会。日本共産党の仁比聡平議員が、原発情報について「特定秘密」にあたるか否かを質問すると、安倍晋三首相は「原発の機能・配置状況は『特定秘密』にならないが、テロに対する原発の警備体制は『特定秘密』になりうる」とでたらめな答弁を行い、原発が秘密の闇に隠される危険性がいっそう浮き彫りになりました。
与党議員が法案の危険性を打ち消そうとして、逆に一般国民が処罰対象となることが明らかになるケースも―。
14日の衆院国家安保特別委で公明党議員が、ブログ(簡易ホームページ)で時事評論などをする人(ブロガー)が処罰対象になるかどうかを質問。内閣官房の鈴木良之審議官は「個別具体的な状況での判断が必要で一義的に答えることは困難だ」と答弁した上で、行政機関が特定のブロガーを「出版又は報道の業務に従事する者」に該当しないと判断した場合は、処罰対象となることを認めました。
19日の同特別委では、「特定秘密」がスクープ報道された場合、情報提供した公務員だけでなく、報道機関も捜査対象となる可能性について森雅子担当相は「個別具体的な事案に即して捜査機関が判断する」と答弁。報道機関が捜査対象になることを認めました。
審議では、これまでに一般国民も処罰対象となることや、何が「特定秘密」なのか知らなくても処罰されることも明らかになっています。
法の根幹に変化なし
自公両党と民主・維新・みんなの3党間で進む「修正」協議は、軍事情報を日米間で共有する体制を強化し、厳罰を科してそれらの情報から国民を遠ざけるという法案の根幹をなんら変えるものではありません。
そのことは、3党が秘密保護法案と一体の軍事立法である国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案に賛成していることに端的に示されています。
維新の「修正」案は、秘密指定の権限を内閣官房、防衛省、外務省に絞るもの。警察などがもつ公安情報を法案の対象から外すという主張です。一方、与党は「限定はできない」としてあくまで全行政機関を秘密指定の対象とする姿勢に固執しています。
公安警察を主とする治安当局は、指定された「秘密」の漏えいで、共謀・教唆・扇動を独立に処罰する同法案によって国民を広く捜査対象に加え、秘密漏えい事件が起きる前から国民を監視する口実を得るということになります。維新・みんなの「修正」はこの点になんら手をつけていません。
警察庁や公安調査庁をはじめとする治安当局は、同法案の検討過程でも一貫して主導的役割を果たしてきました。与党の強硬姿勢は、国民を監視して公安情報を保護する弾圧法としての要素が軍事立法に不可分であることを浮き彫りにしています。
「第三者」検証のウソ
みんなの党や日本維新の会との「修正」協議では、行政機関の長による「秘密指定」が何が秘密なのか無限定だという批判を意識して、恣意(しい)的な指定を排除することへの対策として、総理大臣が秘密指定基準をつくることや、指定の妥当性をチェックする「第三者機関の設置」などが出されています。
「修正」は内閣総理大臣が秘密指定・解除の基準をつくることにより、「総理大臣の第三者的観点からの関与を明確にする(ことで)…恣意的な運用を排除」などとしていますが、総理大臣は行政の長であり「第三者」でありえないことは自明です。
みんなの党内からも「与党がのめる提案を出しただけ」と党略的な狙いを認める声が漏れます。
日本維新の会が求めた「第三者機関」による秘密指定のチェックはどうか。
森雅子担当大臣は14日、同党の山田宏議員の質問に対し、「行政機関内部の第三者機関について検討する」と述べています。これも「行政による行政のチェック」であり「第三者」とはいえません。しかも、その設置を法案「附則」で「検討する」というだけの将来課題であって、現実の危険に対する何の保障にもなりません。
19日の自公両党と維新の協議後の会見でも、「第三者機関」の設置について「準備室をつくって検討していく」(公明党、大口善徳議員)と明言しており、「政府内につくるのかどうか」も「今後の検討課題」です。
自公と合意のみんなの党
国民反発・党内は混乱
自公との秘密保護法案「修正」協議で、早々と合意したみんなの党。同党のある議員は「支持率も低迷し国民から見離されているなかで、安倍内閣と連携する方向に走っている」と述べました。7月の参院選で勢いを失い、頼るところは「安倍首相」しかないとの指摘です。
渡辺喜美・みんな代表は「修正」合意決定後の会見(19日)で、安倍晋三首相との会食で自ら修正案を説明した(14日夜)ことを紹介。「トップ会談もあり極めてスムーズにことがはこんだ」と自慢し、同時に「安倍内閣の改革は、自民党内の抵抗勢力よりもむしろわれわれの方が考えは近い」と今後も協力していく姿勢を強調しました。
しかし、「修正」合意の流れが固まった翌日の同党本部前では市民が抗議行動。各議員の事務所には抗議のファクスが殺到したと関係者はいいます。
同党内には秘密保護法案反対の声もあり、ある議員は「情報への萎縮効果を与える。現行法の強化で良い」とまで語ります。「修正」協議が始まっていた17日にも「廃案にもっていかなければなりません」とメールマガジンに書きこんだ議員もいます。
党内の反発をおそれ、渡辺氏は19日の会見で造反議員は「処分する」と発言。採決にむけ党内が混乱する可能性があります。
国家安保特の審議で判明した秘密保護法案の危険
・一般国民も処罰の対象
・何が「特定秘密」なのか知らなくても処罰
・ブロガーも処罰の対象
・報道機関への“ガサ入れ”も
・スクープ報道も罰せられる
・原発情報も「秘密」の対象
・尖閣有事での情報も「秘密」
・自衛隊の海外派兵活動も「秘密」
・自衛隊情報保全隊の活動も「秘密」
・北朝鮮による拉致問題も「秘密」
・宗教施設(靖国神社、伊勢神宮等)も「秘密」
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