2013年11月20日(水)
主張
「逆立ち」法案審議
「自助努力」は大企業に迫れ
医療・介護・子育て・年金などの制度改悪の日程表を盛り込んだ社会保障改悪プログラム法案が、衆院本会議で自民・公明などの賛成多数で可決され、参院に送られました。社会保障にたいする国の責任を投げ捨て、国民に「自助努力」を迫る法案です。同じ衆院本会議では、大企業が大もうけできる枠組みを国がつくる産業競争力強化法案が、自公と民主などの賛成で可決されました。国民に“きびしい痛み”を強いる法案と、大企業に“ひたすら甘い”法案を同時に押し通す安倍晋三政権の姿勢には道理がありません。
暮らし破壊を次々と
安倍政権のプログラム法案は、来年4月からの消費税大増税と一体で行う社会保障改悪のスケジュールをあらかじめ定める異例の法案です。70〜74歳の医療費窓口負担の2倍化を皮切りに医療・介護などさまざまな制度で国民に負担増と給付減を求めるものです。
重大なのは、社会保障への国の役割を「自助・自立のための環境整備」としたことです。憲法25条で定めた社会保障の向上・増進への国の責任放棄です。
社会保障の根幹にかかわる法案を審議も尽くさず短時間で強行した各党の姿勢が問われます。
安倍政権はいまの国会で、困窮に追い込まれた人でも必要な保護を受けられなくする生活保護制度改悪2法案や、高校生をもつ家庭の約2割を直撃する高校授業料無償化廃止法案もごり押ししています。消費税増税や「アベノミクス」による物価の高騰、貧困と格差の広がりで暮らしを守る政治こそ求められているときに、これらの法案は完全に逆行しています。国民の願いに反する法案は廃案にするのがスジのはずです。
対照的なのが、今国会に出されている、あまりに手厚い大企業応援の法案です。衆院通過した産業競争力強化法案と、衆院審議中の国家戦略特区法案はその典型です。「世界で一番企業が活躍しやすい国」をうたい文句に、大企業の「成長」を支える環境整備にむけて国が至れり尽くせりの政策を実施することを定めています。
競争力強化法案には、企業がもうけのために“邪魔”とみなした規制を、「企業単位」で緩和することを認める前代未聞の仕組みまで盛り込んでいます。特区法案では、「特定の区域」を首相主導で上から押し付け、規制緩和を全国に先駆ける“突破口”としての役割を担わせる狙いです。国民の雇用や安全を守るための制度や規制までも例外なく見直します。国会で意見を述べた経団連代表は“使い勝手が良い”などとほめちぎり早期成立を求めているものです。
国民を応援してこそ
日々の生活に苦しむ国民に「自助努力への環境」を整える法案を押し付けながら、大もうけをしている財界・大企業には、さらに大もうけできる環境を整備する法案を大急ぎで推進する―。「自助努力」を求める相手が間違っています。こんな「逆立ち」した政治は即刻あらためるべきです。
安倍政権の「成長戦略」の正体が、国民を豊かにするどころか、大企業の利益追求のために国民の雇用も安全も犠牲にするものであることは鮮明です。国民の暮らしが成り立たなくては、日本経済の再生や成長もありません。政治の大本からの転換が不可欠です。