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2013年11月18日(月)

友人の名前をすべて書いた 先方に話してはいけなかった

自衛隊員身辺調査 元陸自1尉が証言

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 政府が秘密保護法案に盛り込んだ、秘密を扱う公務員などの「適性評価」をめぐり、この制度を先取りして防衛省・自衛隊が行っている隊員の身辺調査の内容を、陸上自衛隊元幹部が実名で本紙に証言しました。「友人の名前をすべて書いた」といいます。広範な市民のプライバシーを侵害する調査の実態を当事者が報道機関に明かすのは初めてです。


秘密保護法で制度化

写真

(写真)加藤好美元1等陸尉

 証言したのは、1998年から2000年に陸自古河駐屯地(茨城県古河市)の会計隊長を務めるなどした加藤好美元1等陸尉(61)です。

 自衛隊は当時、秘密を管理が厳しい順に「機密」「極秘」「秘」の三つに区分。加藤氏は、このうち「極秘」「秘」の二つを管理者や保全責任者などとして扱いました。

 加藤氏は、自身が受けた身辺調査について、「定期的に『身上調書』の提出を求められた」と説明します。

 この身上調書は、加藤氏の経歴のほか、家族や親族の名前と住所、生年月日、勤務先の記入を求めるなど、人間関係を洗い出す詳細な調査でした。

 交友関係の項目では、「すべての友人を書く。趣味仲間など相手との関係も書いた」と証言。秘密保護法案が適性評価で記載を求める親、配偶者、子、兄弟姉妹やその他の同居人の範囲を超えて、自衛隊は友人、知人の情報まで要求しているとします。

 身上調書の内容は他言不可で、「名前をあげた人に調書に記載したことを話してはいけなかった」といいます。

 また、扱った秘密文書の中身は、部隊の行動や演習内容のほか、「自衛隊に批判的な人物の情報や、集会の予定などもあった」と語りました。これは本紙が追及してきた自衛隊情報保全隊による憲法違反の国民監視活動を裏付けるものです。

 加藤氏は、秘密保護法案は情報保全隊にもお墨付きを与えると指摘し、「『秘密保護』の名の下に、国民の生活や知る権利に危害を与えてはならない」と話しています。


家族を犯罪者候補に

 防衛省・自衛隊が秘密保護法案の「適性評価」制度を先取りし、秘密を扱う自衛隊員に対して行っている身辺調査の実態を告発した、加藤好美元1等陸尉の本紙への証言を紹介します。

写真

(写真)秘密を扱う隊員に家族や友人などの情報を提出させている防衛省=東京・市ケ谷

 ―秘密指定の文書を扱ったことがあるか。

 ある。最も管理が厳しい「機密」を除き、「極秘」「秘」を扱った。

 ―どのような人物が秘密を扱うのか。

 部隊には、秘密の「管理者」「保全責任者」「保全責任者の補助者」「取扱者」がいる。すべて経験した。

 ―秘密を扱うにあたって、自衛隊の身辺調査を受けたか。

 全隊員が入隊前に「身上調書」を書く。更新は一般隊員で10年ごとだが、秘密を扱う者に指定されると責任区分に応じて7年、5年、3年ごとに書く。

秘密扱う隊員の「身上調書」

同級生や趣味仲間も記入

 ―身上調書とは?

 まず、自分の生い立ちを書く。それと親族の名前と住所、生年月日、勤務先。これは配偶者の親、配偶者の兄弟姉妹まで書かされた。友人など付き合いのある人は老若男女を問わず、すべて名前をあげた。「同級生」や「趣味、サークル等の仲間」など相手との関係も書いた。記載したことは相手に話してはいけなかった。

 ―審査の流れは?

 部隊長に調書を提出し、部隊長が警務隊に渡す。好ましくない個人や団体と付き合いがあれば、聞き取りなどの調査を調査隊(2003年に情報保全隊に移行)が行う。問題になれば、秘密を扱わない部署に行くか、常に調査の対象となる。

 ―秘密を扱う公務員や労働者を調査する「適性評価」が秘密保護法案に盛り込まれた。

 こんな制度を法律で定めるのかと、恐ろしく感じる。いままで内々にやってきたが、意味合いが変わる。法案の重い罰則と合わせれば、家族や友人など多くの人を犯罪者の候補として組織に通報する仕組みとなる。

厳罰で脅す秘密保護法案

国の不正ただす告発萎縮

 ―自衛隊が秘密とした文書の中身はどのようなものだったか。

 部隊の行動や演習の内容に、「秘」のゴム印が押されていた。ほかに、自衛隊に批判的な「反自衛隊勢力」とした人物の情報や、どんな団体がいつどこで集会を開くというものが文書でまわってきた。それをもとに、隊員に対して「関わらないように」などと注意喚起していた。

 ―市民団体の監視や個人情報の収集は、情報保全隊がひそかに行ってきた。仙台地裁は12年3月、個人情報収集を違法と認定している。

 秘密保護法が成立すれば、情報保全隊は法的なお墨付きをもらう。秘密の公開を求める「扇動」や「そそのかし」が罪になるのだから、その有無を探るための監視活動が正当な行為とされかねない。

 ―自衛隊官舎にビラを配布した3人が04年2月に逮捕され、住居侵入で有罪となった。この立川ビラ弾圧事件は、駐屯地前で宣伝を繰り返す市民グループを黙らせるため、情報保全隊と警察が協力して逮捕したとする情報保全隊の内部文書を本紙がスクープ(07年10月12日付)している。

 秘密保護法があれば、そんな遠回りは必要ない。宣伝などを情報保全隊がつねに記録し、扇動などにあたる言葉を集めて警察に逮捕・家宅捜索させればいい。起訴までしなくても、大きな萎縮効果を与えられる。

 ―国の違法行為などの告発も、秘密の漏えいだと罪に問われかねない。

 私は自衛隊のカラ出張による裏金づくりを告発した。告発はただでさえ職場から孤立し、仕事を失う恐れがある。さらに厳罰で脅せば、国の不正をただす告発は萎縮してしまう。国に都合よい情報だけが流されることになる。


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