2013年11月13日(水)
タイ・カンボジア国境紛争
対話による解決促す
国際司法裁「世界遺産で協力を」
【ハノイ=松本眞志】国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は11日、タイとカンボジアの国境紛争訴訟で、国境地帯の高台にあるカンボジアの世界遺産、プレアビヒア寺院と周辺の高台一帯がカンボジア領だとの判決を出しました。判決は、両国が領有権を主張している寺院北西部の丘陵地の頂上部分について、判断を示さず、「両国が協力して遺産を保護すべきだ」と要求。国境紛争の平和的解決を強く促す内容になっています。
カンボジア領は寺院のある高台の一部だとするタイ側の主張は退けられました。
ICJは1962年、寺院の敷地をカンボジア領と認定、タイ側に寺院周辺のカンボジア領からの撤退を命令。両国とも判決を受け入れました。
しかし2008年に寺院が世界遺産に登録されたことをきっかけに紛争が再燃。寺院周辺のカンボジア領域そのものをめぐる対立が続きました。
11年に両軍が衝突して死傷者も出たため、カンボジア側が62年の判決の解釈確認を求めて提訴。同年、ICJは両軍の撤退を命令し、寺院と土地の帰属について審理を続けました。
今回の判決は「カンボジアは高台のすべての土地に対して主権を有する」と判断したもので、62年の判決内容を確認。タイ側は対象地域からの軍・警察部隊の撤収の義務を負うとしました。
ICJが帰属を明示したのは寺院周辺だけ。寺院北西部は、62年の判決の対象外だったとして判断が見送られました。
今回の判決について、タイのインラック首相は「2国間の話し合いで解決を目指す」とする声明を発表しました。
カンボジアのホー・ナムホン外相は「百パーセント満たすとは言えないが満足だ」と評価しました。
プレアビヒア寺院 カンボジア、タイ国境の絶壁に立つクメール様式のヒンズー教寺院遺跡で、アンコール王朝が9〜11世紀に建設。国際司法裁判所(ICJ)は1962年、カンボジア領と判決。2008年、カンボジアの申請で国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産に登録。寺院周辺に国境未画定部分があります。