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2013年11月9日(土)

主張

リニア中央新幹線

不安続出でも突っ走るのか

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 JR東海が2014年度着工をめざすリニア中央新幹線計画(東京―名古屋)の具体的な姿が明らかになるにつれ、国民の疑問や不安が広がっています。関係自治体で行われたリニア計画の説明会では、自然環境や住環境への影響についての多くの問題を指摘する意見が次々と出される事態となっています。納得できる説明をしないJR東海への不信も強まっています。国民的な要求もないまま始まったリニア計画の大義のなさはいよいよ明らかです。

「人命軽視」の指摘

 リニア計画は、超電導磁石の力で車体を浮かせ軌道上すれすれを最高時速500キロの猛スピードで走る、従来の鉄道とまったく次元の違う構想です。27年に東京―名古屋で営業運転を始め、45年に大阪まで延伸する計画です。東京―名古屋間約286キロのうち86%をトンネル区間にするなど、前例のない困難さを伴う巨大事業です。

 建設費も桁外れです。名古屋までで5兆4300億円、大阪まででは9兆300億円に達します。JR東海が全額負担するため、計画は同社まかせです。政府や国会の検証がほとんどされないまま計画が既成事実化されていること自体、大問題です。

 JR東海は9月半ば、東京―名古屋の詳しいルートや中間駅の場所を初めて公表し、関係する東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知の各都県内で住民説明会を行いました。着工認可へ向けた環境影響評価(アセスメント)手続きの一環ですが、沿線住民の声は、リニアへの期待よりも、強い不安と疑問が多数です。

 ごくわずかな地上部分となる山梨県内では、激しい騒音や振動、高架による町の分断や日照権破壊への質問が続出しました。すでに山梨実験線で騒音被害にあっている住民からの「耐えられない」との声は切実です。長野県内では、南アルプスで25キロものトンネルを掘削することの安全性、膨大な残土置き場がないこと、水枯れへの懸念などが出されました。学校移転など地域を一変させる計画や、車両基地がオオタカの生息地であることも問題となっています。

 日本自然保護協会は、リニアが活断層をいくつも横切ることなどを指摘し、「人命を軽視した計画」などとして計画の凍結と議論のやり直しを要求する意見書を提出しました。JR東海はこれらの声を正面から受け止め、計画の是非を根本から見直すべきです。

 そもそもリニア計画は国民の要求で生まれたものではありません。約40年前の計画を、時代の変化にもとづいて十分検証もせずに実行するのはあまりに無謀です。

 使用電力が新幹線の3倍もかかるリニアは省エネ時代に完全に逆行しています。人口減少を考慮せず甘い需要見通しを立てましたが、JR東海社長も採算がとれないことを認めざるをえません。

中止の決断こそ

 計画続行は、将来世代にとてつもない「負の遺産」をおしつける結果にしかなりません。

 新幹線が老朽化の時期に入り、南海トラフの巨大地震への備えなど交通網の耐震化などが急がれるいま、リニアに巨費を投じる余裕はないはずです。東京五輪を口実にしたリニア推進などもってのほかです。未来に禍根を残すリニア計画はきっぱり中止すべきです。


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