2013年11月7日(木)
主張
日本版NSC
盗聴とウソで戦争させるのか
安倍晋三政権与党の自民、公明両党と民主党などが、今国会の重要法案の一つである国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案を、特別委員会でのわずか1週間あまりの審議で採決を強行、今日にも衆院本会議を通過させようとしているのは、まさに言語道断というほかありません。国会の自殺行為です。自民、公明両党は同法案に続いて、一体で成立を狙う秘密保護法案についても審議入りの強行を決めました。戦争を放棄した日本国憲法を踏みにじる、戦争法案・軍事立法の強行は断じて認められません。
もっぱらアメリカ頼みで
「外交・安全保障の司令塔」をめざす日本版NSCは、平時にも有事にも対処する「戦争司令部」です。お手本はアメリカ大統領の下でアフガニスタンやイラクでの戦争を指揮したアメリカのNSCです。「官邸機能の強化」をうたい文句に、首相、官房長官、外相、防衛相からなる「4大臣会合」を定期的に開くほか、首相補佐官と国家安全保障局をおき、外交や軍事問題を首相が主導的に判断し決めるというものです。
政府はNSCに情報を一元化するといっていますが、頼みにするのはアメリカです。安倍首相が第1次政権時代からNSCの設置に固執したのも、日本にもNSCがなければアメリカのNSCから情報がもらえないというのが理由です。NSC法と一体で秘密保護法の成立をめざすのも、秘密保護法がなければアメリカが「安心して」情報をくれないという自主性のひとかけらもない理由からです。
そのアメリカでは、NSCの活動を支える国家安全保障局(NSA)がメルケル・ドイツ首相の携帯電話を傍受するなど、世界各国で違法なスパイ活動を行っていたことが明るみに出て大問題になっています。ワシントンの日本大使館なども通信傍受の対象になっていたことも明らかになりました。もっぱらアメリカ頼みの安倍政権は、こうした違法な盗聴スパイ活動にも抗議ひとつできない情けない態度です。
アメリカの情報だからといってうのみは危険です。実際、イラク戦争では、イラクが大量破壊兵器を隠しているなどウソの情報で、日本は戦争支援にふみだしました。アメリカの同盟国の多くでさえイラクでの開戦に反対していたのに、当時の小泉純一郎首相は「アメリカの主張には正当性がある」と支持し、アメリカ支援にふみだしたのです。その後も政府は情報を検証せず、誤りを認めていません。NSCを通じたアメリカとの情報共有は、同じ誤りをくりかえす道です。
暗黒政治の復活許さない
こうした恐れがあるのに、安倍政権がNSC法と一体で秘密保護法を成立させようとしているのはきわめて危険です。イラク戦争のように、アメリカからのウソの情報で日本が戦争にかりだされても、国民がその情報はウソではないかと追及すれば秘密保護法で処罰されるという事態さえ起こりかねません。最悪の暗黒政治です。
もともと戦前の反省から、戦争を放棄し話し合いで平和をめざすことを憲法で明記した日本に「戦争司令部」や秘密保護法は必要ありません。戦争法案や軍事立法を許さず、日本は世界の平和のためにもっと役割を果たすべきです。